日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第67夜 幸運タクシー

道路の端に佇み、タクシーを拾おうとしています。
隣では園児の息子が父親の袖につかまっていました。

父子が立っているのは、「夢の中にしかない街」のはずれにある宅地ゾーンです。
「オレ、午後のお楽しみ会に出たいんだよ」と息子。
なるべくそれに間に合うように幼稚園に連れて行かなくては。
しかし、空車のタクシーはなかなか通りません。

「あ、来た」
息子が声を出しました。
あわてて手を上げると、「空車」のランプは点いておらず、中には客が乗っているようです。
「お客さんが乗ってるよ。赤いランプがついてなくちゃダメなんだよ」
タクシーは父子の前を通り過ぎようとしました。
再び道の右手に顔を向けます。

すると、キュキュと音がするので左を向くと、今、通り過ぎようとしたタクシーが急停止していました。
程なく後部座席のドアが開きます。
「ここでタクシーは拾えないよ。駅まで一緒に乗ってけば?」
ドアの奥から声が聞こえました。

「すいません」と頭を下げ、車に近づくと、後部座席には大きな体、大きなお腹の妊婦とその娘らしき子どもが座っていました。前の助手席にはダンナさんらしき男性もいます。
ものすごく窮屈そうでしたが、息子、私の順に乗り込みました。
「ここいらでタクシーを捜しているんじゃ、とりあえず駅まで行きたいんだろうと思ってね」
前に座るダンナさんが声を掛けます。

隣の妊婦を見ると、臨月に間違い無さそうな大きさで、ふうふう息を荒げています。
「いやあ。カミサンが急に産気づいちゃってね」
それじゃあ、私たちを乗せている場合ではなかろうに。
「ところが、車に乗ったら、カミサンはどうも違うようだと言い始めるし。ま、とりあえず病院には行かなきゃね」

脇でクスクスと笑い声が聞こえます。
息子と女の子は同い年くらいだったようで、すぐに打ち解け、遊び始めていたのです。

「どちらまで?」と運転手が尋ねます。
「○○○駅に行きたいんです。でももちろん最寄の駅までで結構です」
「ここからだと東○○が近いけど」
全く聞いたことのない駅名だ。でもとりあえず、行けばどうにかなるだろう。

数分もかからず、駅の前に着きます。
メーターを見ると、1600円台でした。
「困っていたところで、本当に有難うございました」
財布から3千円ほど出し、運転手に渡そうとしました。
お札を受け取った運転手は、ぎょっとしています。
「お客さん。お札を間違えてない?これ5千・・・万円札だよ」
私は千円札3枚を渡したつもりなのですが、実際は千円札2枚と5千万円札が1枚だったようです。
5千万2千円ですね。(ちなみに5千万円札の意匠は聖徳太子でした。)
「あれまあ、5千万円札とは」
ダンナさんが振り向きました。
「初めて見るお札ね」
妊婦の奥さんも興味津々で覗き込みます。

「こりゃすいません」
私はお札を取り替えようとするのですが、財布の中は1億円札が2枚と普通の5千円が1枚だけです。
3千円のつもりだったけど、ま、いいか。
5千円札を運転手に差し出しました。
「これでも多いですけど」
運転手はしきりに恐縮しています。

「いいんですよ。私たち父子は幸運を分けてもらおうとしているのですから。産気づいた妊婦を乗せられたタクシーも幸運なら、そこにまた拾ってもらえた私たちもこれから幸運が転がり込むことは間違いありません」
自ら語りながら、アジア各地で妊婦は幸運の象徴だってことを思い出しました。
もし車の中で産気づいたのなら、その後そのタクシーは「幸運タクシー」として山ほどのご祝儀がもらえます。

ドアが閉まり、私と息子は駅に向かって歩き出しました。
「おい、○○(息子の名前)。トーサンたちはこれから随分とついてきそうだよ」
その時息子はタクシーの方を振り向き、女の子にしきりに手を振っていました。

ここで覚醒。
ものすごい吉夢でした。