日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎夢の話 第767夜 誰もいない街

◎夢の話 第767夜 誰もいない街

 19日の午後4時に観た夢です。

 

 我に返ると、俺は交差点の角に立っていた。

 「ここはどこだろう」

 周囲を見回すが、地名の分る標識などは無い。

 どちらかと言えば、郊外の避暑地のようで、遠くまで別荘が並んでいる。

 商店なども見えるが、田舎には似つかわしくない賑やかさだ。

 「K井沢か、H根の外れみたいだな」

 

 季節は秋の終わり頃のようで、木の葉が地面に落ちている。

 じっと立っていても仕方が無いから、その場を離れ歩き出した。

 「サンドイッチでも買って食べよう」

 しばらく歩くと、スーパーらしき店が見えて来た。

 広い駐車場には、車が数台停まっているだけで、人の気配は無い。

 壁掛け時計が掛かっていたので、それを見ると、時刻は5時8分を指していた。

 店の前まで行ってみる。

 しかし、玄関の中は薄暗かった。

 

 「ありゃりゃ。今日は休みなのか」

 そんな筈は無い。この日は週末で、掻き入れ時だ。

 「それなら、夕方は5時で閉店するのか」

 よほどの田舎に行けば、たまにそういうこともある。しかし、こんな高原の別荘地ならそれはないよな。

 ま、閉まっているのだから仕方が無い。

 入り口のガラスの奥を覗いて見たが、人はおろか、商品さえ陳列されていなかった。

 「なんだ。閉業した店だったか」

 

 再び道に戻り、歩き出す。

 街路を歩いている内に、辺りが暗くなって来た。

 さすがに日の落ちるのが早くなった。

 ここで、あることに気付く。

 「ここの街は、どの店も閉まっているよな。人が一人もいない」

 そして、まだ一台も車が通っていなかった。

 鳥の声も風の音も、何ひとつ聞こえない。

 

 俺は思わず叫んだ。

 「不味い。こいつはダメなヤツじゃねーか。これが夢なら早く醒めろ」

 目覚めねばと決意してから、しばらくかかり、俺は俺の肉体の中に戻った。

 ここで覚醒。

 

 「危ねえ、危ねえ。あれはあの世じゃないか」

 死んだ後に、どういう世界が待っているかが、ようやく最近になり分って来た。

 死ねば肉体を失うが、しかし、自意識はいくらか残る。どれくらいの期間かは分らないが、どういう人でも必ずそのステップを通る。

 要するに、「人は必ず幽霊になる」のだ。

 自意識はあっても、それを確認する手立てが無いから、喜怒哀楽の想念だけの存在になる。五感を通じてしか、自身の存在は確認できないのに、その五感を失っているから、そうなってしまう。

 すると、死んだ魂を取り巻くのは、その魂が抱えた記憶や感情自体が創り出す情景だけになる。 

 この夢の中の「誰もいない街」は、私自身が作り出したものなのだ。

 

 コテコテの悪霊でも魑魅魍魎でも、まだ「いてくれる」だけで有り難い。

 もし、ひとっ子一人いない、廃墟のような街に留まることになるのなら、本当に怖ろしい事態だと思う。暗いトンネルの中に閉じ込められるのと大差ない。

 だが、それが死後の世界だ。

 幽霊には他の存在が見えていないから、「誰か他の者」を捜して彷徨う。

 そして、何がしかの存在の痕跡を見つけると、大急ぎでその相手にしがみつく。