◎ジェネレーションギャップ
病院では、検査の時の「決まり」になっているようで、レントゲンや心電図で事前に名前の確認がある。
体重計測の時にも「お名前は?」と訊かれるが、ベテラン患者でさすがに皆が知っているから、あくまで儀礼的なものだ。
そこで、当方はテキトーに「言われりゃ懐かしい人名」を言うことにしている。
「たこ八郎です」
「佐藤蛾次郎です」
「田宮二郎です」
オヤジやオバサン看護師だと、そこで「ああ懐かしい」となる。
しかし、そろそろネタが無くなって来た。
漫才師も歌手も俳優も全部使ってしまった。
先日、目の前にいたのが50歳くらいのオヤジと45歳のこれまたオヤジ看護師だった。
そこで女優さんの名前を言ってみた。
「片桐夕子です」
すると、50オヤジは「え。誰ですか。それって」と訊き返した。
訊かれたこっちの方が驚く。
「え。白川和子はともかく、片桐夕子を知らんのか」
にっかつの大女優だろ。
「じゃあ、風祭ゆきは?」
「それは聞いたことがあります」
そりゃそうだ。風祭ゆきさんは、一般のドラマや映画にも出ていたからなあ。
「にっかつの女優さんを知らんとは驚いた。いったいどんな青春時代を送っていたんだよ」
でも、よく考えると、トシが十以上も違えば、こっちが20歳前後の頃、50オヤジでも小学生だった。
この人たちが年頃になる頃には、にっかつは無くなっていたわけで。
それなら当たり前だよな。
ここで頭の中では色んな名前が浮かぶ。
「にっかつの聖子ちゃん」と言えば、寺島・・・何だっけ?
「しのぶ」じゃねえし。「純子」じゃそのお母さんだ。
結局出て来ず、後で調べて、ようやく「まゆみ」さんだと分った。
『セーラー服色情飼育』はほれ、誰だっけ。
これは割とすぐ出て、可愛かずみさんだな。もう亡くなったが。
百合族シリーズの山本奈津子さんとほれ。
「小田かおる」を思い出すのにには、ベッドに戻ってから30分掛かった(苦笑)。
昔のにっかつ映画は、傍から見た想像と違い、きちんとした筋があった。ドラマがあったのだ。
石井隆や金子修介、崔洋一、周防正行、相米慎二らもここがスタートラインだ。
短けりゃ30、40分だが、大体1時間弱だったのに、きちんとストーリ-を組んでいたっけな。
週末に深酒をして、終電を逃した時には、いつもこの手の映画館に入ったものだった。椅子に座って寝られるからだが、時々、筋が面白いものがあり、朝まで観たりした。
でも、それも「今は昔」だ。
昔は良かったなあ。
仮にロトを引き当てたら、真っ先に作るのが名画座だ。
2百席くらいで、酒を飲みながら観られるようなこじんまりした映画館だ。
週末はゴジラとかガメラだが、金曜の夜9時以降はにっかつ映画が良いと思う。
今はその名画座自体、見当たらなくなった。
『アラビアのロレンス』なんかは、絶対にビデオではなく銀幕で観るべきだと思う。