◎ガラモンさんの話、その他
今日の午後、病棟を出ようとすると、救急隊員が3、4人来ていた。どうやらガラモンさんのベッドのようだが、カーテンを引いてあり詳細は分からない。
ガラモンさんは1年前に心停止しているほどだから、冬場はかなりキツい。
(「心停止クラブ」会員の当方も、やはり冬の間は警戒を怠ることはない。)
ガラモンさんは血圧が急に下がったから、前例もあり、循環器専門病院に運ばれるのだろうと思う。
病棟では、割とこういうのはよくあり、そのまま戻って来ない人も結構いる。
ガラモンさんは病棟で一番の古株だし、当方は3番目か4番目だと思う。4年で20人くらいが病棟とこの世を去った。
少し前にガラモンさんは「次は私の番だ」と笑っていたが、その言葉が現実にならず戻ってきて欲しい。
今や当方の「マブダチ」の一人だし。
ま、普通では考えられぬほど、ガラモンさんの生命力は強いし、運もある。つい前回には、「店を再開しようかな」と言っていた。
当方より「年齢が下」だということが判明したので、是非とも乗り越えて欲しいもんだ。
病棟では日常茶飯事で、次々に患者がいなくなるし、下の階の救急処置室の前に行けば、搬送されて来る人にほとんど毎日のように出会う。
顔色や隊員の表情を見ると、この人が助かるものかどうかは、概ね想像がつく。
搬送の途中で患者が亡くなっているケースが結構あるのだが、そういう場合には、隊員は特に慌てず急がず、扉が開くのを待っている。
もう少し修行を積み、「お迎え」が寄って来るのを防御できるようになればいいのに。
うまく立ち回ると、1年2年くらいは延命できるようだ。
概ね、「お迎えが来ていた」と分かるのは、亡くなった後のことだから、防御の手立てを講じにくい。
ま、家族であれば、そこまで気が回らない。
第三者が危機をパッと見取り、スパッと「こうすると回避できる」と解決策を示せれば、助かる人も多いだろう。
当方の場合は、そこにいる何かを引き取ってしまうようだから、迂闊なことをすると、自分の身に降り掛かる。
「お迎え」が当方のことを見てしまうことにもなりかねないのだ。
これは今朝のことだ。
車に乗ると、「ピーピー」と警告音が鳴った。
警告灯は「シートベルト不着」なので、自分のを確かめるが、きちんと締めている。
「こりゃ何?」
ま、もちろん、冬場なので、電気系統は怪しくなる。
寒さで接触が悪くなるわけだ。
この辺は、いつもあの世のことばかり考えているわけではない。
でも、煩いから、ものは試しに声に出して言ってみた。
「煩いから止めてくれよ」
すると、パタッと音が止まった。
ここまでは「たまたま」だ。
けして「目に見えぬ誰かが座っていた」ということではない。
そのまま進行し、最寄りの駅に近づくと、また「ピーピー」と鳴り始める。
この辺りでは、これは「駅に寄ってくれ」と意味ではないかと思うようになったので、ロータリーに入り、乗降スペースに車を停めた。
ここからが本題だ。
やっぱり「ピーピー」と鳴っているので、「ドアを開けてやらねばならんのかな」と思ったが、小奇麗な女性を乗せていたってそんなあざといことはしないので、窓を開けた。
「悪いけど、そこから出てくれるか」
すると、警告音がピタッと止まった。
少しタイミングが合い過ぎるよな。
こういうのは「気のせい」で、「たまたま」だと思う。
因果めいたストーリーは、総てが想像や妄想だ。
それでも、うまく乗りこなせると、かなり役に立つ。
当方的な妄想では、これは先日、神社で当方を発見した「首吊り女性」で、今は執着心の原因になった場所に行くのだと思う。たぶん、男の人のところだ。
死ぬと思考能力が無くなるから、その「男の人」を探し当てるのは難しい。だから、途中で、心根の似た男性がいると、その人に取り憑くだろうと思う。
でも、大したことは出来ない。
幽霊は心の持ちように影響することはあるが、映画や小説のようなことはしない(原則として、だが)。
だから、早くこの女性が自らを癒し、かつての苦痛を忘れられることを願う。
そんなことを想像し妄想した。
ここで実際に何が起きているかは、「どうでもよい」ことだ。理由づけなどする必要がない。
とかく神とか霊とか、あるいは科学だとか、あれこれ説明をつけたがる「偽者」や「初心者」は多い。しかし、そんなのは些細なことだ。
バイクや車だって、構造など分からず、組み立てることも修理することも出来ないのに、難なく乗っているし、重宝に使っている。
上手に乗りこなせれば、うまく生きられるし、死後にあてもなく彷徨うことが無くなる。