◎あれは一年前
画像はちょうど一年前の二月のものだ。
どうにも体調が悪く、「少しでも良くなってくれ」と遅い時間だったが、神社に参拝した。
冬の夕方五時を回っていたから、もはや暗くなっている。
神殿も閉まっていたが、ひとまず拝礼を済ませた。
その時にはもはや真っ暗になっていた。
階段を降りると、すぐにトラが駆け寄って来た。境内のどこかにいたが、遠くから私を見つけて、歩み寄って来たのだ。
ここで「トラと一緒に写真を撮ろう」と思い立ち、自撮りをしてみた。
すると、トラの周囲に赤い玉が幾つも浮かんでいた。
ここにはフラッシュ以外の光が入らないし、空気も乾燥しているから、確実に煙玉だろう。
もちろん、自然現象ではなく、「説明のつかない」タイプだ。
私の出すのは白い煙状の玉だから、この赤玉はトラのものだろうと思う。
私の顔は暗がりでうまく焦点が合わなかったのか、よく写らなかった。
あるいは、長い髪の毛が少し見えているので、誰かが顔のすぐ前にいたのかもしれん。
トラはこの後、四月中に死んだと思う。
最後に会ったのは四月の初めだが、必死で私に爪を立て「離れまい」としていた。
トラの死期に気付いていれば、「膝の上で逝かせてやれたのに」と今にして後悔する。
ま、今もすぐ近くにいると思う。
髪の主は私が「御堂さま」と呼ぶ女性で、今ではこの女性とトラ、私は三体でひとつになっている。
私に危機が訪れると必ずトラか女性が姿を見せ、「こういうことだ」という示唆を与えてくれる。
手を出して守ってくれることはないのだが、心を正してくれるので、私は自ら自身の状態に気づくことが出来る。