◎歴史は繰り返す
父は商店主で、60歳くらいまで自ら市場に行き、店で魚を捌いていた。
夕方には疲れてしまい、夕食の前に一杯飲むと、ご飯も食べずに、居間の長椅子で寝てしまう。
毎日がその繰り返し。
私が高校生くらいの時には、ごろ寝する父にいつも毛布を掛けていた。さすがに夜中になると寒いためだ。
今、私は体を使って働いているわけではないが、体が長くもたず、夕食の支度をすると、すぐに居間の床で眠り込んでしまう。そこは「持病の百貨店」で、日に動けるのは数時間だ。
ご飯を食べずに寝てしまうので、夜中の2時頃に眼が覚める時には低血糖症になっていることもしばしば。
そこで気が付くのだが、今は息子が父親を案じて、体に毛布を掛けてくれている。
あの頃の当方と同じ。
自分がへなへなな存在になってしまうと、その頃の父親は私とは比べ物にならないくらい立派だったと思う。
なかなか郷里に行けず、もはや一年以上、父に会ってはいないが、次に会う時には、礼を言おうと思う。
自分の身にふり掛からねば、本当のところは分からない。
父は仕事が終われば、すぐに酒を沢山飲んで寝ている人だと思っていたが、子どもたちのことを考え、子どもたちのために必死で働いていたのだ。
頭でわかったような気になるのと、実際にその立場になって体験するのでは天地の差がある。