


◎こっちを見ている
数時間前に、家人がSNSに写真をアップしていたが、それに私の「悲しいね」スタンプが押してあった。初めて目にしたのに、既に押してあったのだ。
おまけに、わざわざスタンプを選んで押してあった。
「記事を開いてもいないのに何故?」
ちょっとやな感じだ。
画像を見ると、ああなるほど、こっちを見ている視線がある。
ダウンロードして、明るさを変えてみると、なるほど遠くの道のガードレールを黒い影が消していた。
湖面に直立しているので、山の影ではない。
しかし、これは私にしか検知できないケースだと思う。要するに「ただの想像や妄想」の類だ。
私が「何となく分かる」のは、特別な能力があるためでは無く、その視線が「私のことを見ている」からだ。
ちょうど水の中から女たちが湧いて出て、こっちに近寄って来ようとするところだ。
受け止め方によっては気持ちが悪い話だが、ここに写っている家人には何ら影響はない。
そのことが言い切れるのは、湖面に立っている女は、私に向かって手を差し出しているという点だ。用事がある相手は私だけなので、他の人に見られる必要はない。
いずれにせよ、私だけがそれを認識するなら、やはり「想像や妄想」と同義語になる。自分自身で処理する他はない。
これまで何となくこの場所に来ては、幾度もお焼香をしているが、それはこういうことだったか。
前もって「悲しいね」スタンプが押してあるのは、「自分を見てくれ」という意味だろうが、他に何か意図があるのだろうか。
右側の山には霧の中に煙玉が出来つつあり、あと少しすれば「大きな女の顔」になったと思う。
以前、K湖でも見たのと同じ女だと思う。まだ成仏出来ていないようだ。