日刊早坂ノボル新聞

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◎リサイクル店のオヤジの話

◎リサイクル店のオヤジの話

 先日、H市に向かう旧道を進むと、リサイクル屋の店が閉まっていた。

 この一年は扉が開いているのを見た例がない。

 売買自体はやっているようで、解体屋が勝手に置いて行ったがらくたが入り口に積んである。おそらく、古い付き合いがあり、解体屋は家を壊した際に出た不用品を貰い、この店に流す約束をしているのだろう。付き合いが長ければ、後精算でも大丈夫なわけで、そういう取引は楽だ。

 

 店主はアラ七十くらいのオヤジジイだが、一時、三十台前半の年恰好の「彼女」がいたことがある。家人と一緒に訪店した時に、その「彼女」もいたのだが、その女性は外国人で、すこぶる美形だったようだ。

 ちなみに、私は器(焼き物)を見るのに忙しかったから、女性のことは見なかった。

 

 店を出ると、家人は「あの小父さんは、その女の子がよほど好きなんだよ。髪にパーマをかけ、茶髪に染めてるし、ジーンズがビンテージ物だったから」

 思わず、「そりゃ不味いね」と漏らしてしまった。

 七十のオヤジジイに、若くて美人の外国人彼女の組み合わせだ。

そうくれば、「財産」か「永住権」を取られる、というのがお決まりのコースだ。

 年齢が半分以下の美女が、「たまたま転がり込んで来る」なんてことはない。

 ま、下手にキャリアを持たぬ者は、当りが柔らかいから、「かつては偉かったひと」よりよほどチャンスはあるが、身の丈が違い過ぎる。

 

 その様子を見て、むしろ家人の方が店主を心配していた。

 家人は外国籍だ。その「ガイジン」が周囲の状況を観察して、そう思うのだから、かなりヤバイ。

 それだけ、女性が美人だったということだ。東洋系だが、どこかは分からなかったらしい。たぶん、ハーフなんだな。

 

 それから半年くらいすると、どうやら悪い方の予感が当たったらしく、店をいつ訪れても開いていることがなくなった。

 たぶん、店主はよほどショックを受けたのだろう。

 ま、取るものを手に入れれば、相手はさっさと去ってしまう。

 果たして、オヤジが持ち去られたのは、老後の貯えか、永住権か。

 家人は「その女性が親戚を呼べるようになるから、永住権だと思う」と言うが、当方は「両方」だろうと思う。

  

 家人によると、「もの凄くきれいなひと」だったと言う。

 正直、そりゃ一回見てみたかったな(w)。

 「茶髪パーマとビンテージジーンズ」には、オヤジの恋心が詰まっていたわけだ。

 これから死ぬまでの間に、「自分の半分以下の齢の美女と恋に落ちる」経験があるだろうか。

 

 しかし、七十で「失恋の痛み」を味わえたのだから、そのオヤジも十分に楽しめたと思う。

 生きる目的は、「無難に生きる」ことではない。

 喜怒哀楽の全てを味わえばよいと思う。