日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎夢の話 第929夜 神社

◎夢の話 第929夜 神社

 26日の午前4時に観た夢です。

 

 一千四百年前に建立された神社に参拝すべく、女房と二人で車に乗って出掛けた。

 あまり訪れたことのない地方だったが、その神社へは一本道だったし、近くに行くと遠くからでも幟が立っているのが見えていた。

 近くまで行ったが、しかし、山ほどの参拝客が列をなしていた。

 「おいおい。こんな山の中に何千人もの参拝客が来るのか」

 「何かの催しがあるんじゃないの?」

 駐車場の方を望むと、やはり車が満杯に入っていた。

 

 「入れるかどうかわからないけれど、とりあえず駐車場まで行ってみようよ」

 ひとまず駐車場の方に行ってみることにした。

 すぐにゲートがあり、受付係が顔を出した。

 窓口の下には「空き無し」の札が立っている。

 窓から顔を出し、「もう駄目ですかあ?」と訊いてみる。

 係の男は俺を一瞥すると、「あ、大丈夫ですよ。きちんと空けてありますから」

 

 「空けてありますから、だって。まるで俺たちが来ることを知っていたような言い方だよな」

 「ホントだね。でも、いいじゃない。入れるんだから」

 「ま、それもそうだ。山門の前には蕎麦屋か何かがあるだろうから、何か食ってく?」

 「椎茸丼じゃなければ食べるよ」

 雑談をしながら、駐車スペースを探すと、山門に最も近い場所に、ひとつだけ空いているスペースがあった。

 「もしやこれのことなのか」

 「やっぱり何だか待っていたみたいだね」

 車を降りて、鳥居の方に向かう。

 

 神社は境内の外にまず一つ目の鳥居があり、長い階段を上ると、もう一度鳥居があり、そこからが本当の境内になるつくりのようだった。

 「うひゃあ、少なくとも二百段の階段だ。俺の心臓で果たして耐えられるかな」

 「ゆっくり、休み休み行けばいいんだよ」

 でも、やはり自然に家人が先に立ち、ダンナの方は遅れてしまう。

 女房はダンナを置いて、先に三十㍍くらい坂の上に上っていたが、そこから引き返して来た。

 

 「どうしたんだよ」

 「上の方にお巫女さんが立っていて、『貴女はまだ入れません。戻って下さい』って言うから戻って来たのよ。お父さんが上がったところでダメって言われたら、せっかく苦労して階段を上がったのが無駄になるから、先に報せに来た」

 「何だ。入れる人を選ぶのか。どんな条件何だろうな」

 「お父さんは大丈夫だって。あの巫女さんに先に聞いてみたから」

 「え。俺は入れるのか」

 「うん。わたしはここで待っているから、先に行って、中を見て来て」

 「疲れるかもしれんから、車で待ってると良い。ほら鍵」

 ここで女房に車の鍵を渡す。

 

 階段をえっちらおっちら上って行くと、家人の言っていた巫女さまが端に立っていた。

 巫女さまは俺の顔を見ると、一礼をして言った。

「お待ちして居りました。では中にお進みください」

 え。俺が来ることをどうしてこの巫女さまは知っているわけなの?

 「まるで私が来ることを知ってるようだけど」

 「ええ。もちろんですよ。順番ですもの」

 順番。順番って何?

 

 ま、とりあえず参拝してみよう。

 そこから再び階段を上り始める。

 すると、三十段も行かぬうちに、行列に突き当たった。

 先に来ていた参拝客が左側に列をなしていたのだ。真ん中は空いていたが、これは神社だからということだ。

 「こりゃ長くなりそうだな」

 車で待つ女房のことが頭を過ぎる。

 すると、不意に俺の眼の前の参拝客が後ろを振り向いた。年のころは四十幾つと言ったところのこざっぱりした服装をしたオヤジだ。

 「あ。貴方は後ろでなくて良いんですよ。この真ん中を通ってお上がり下さい」

 「え。良いんですか?」

 「本来、貴方がずっと先に上がっている筈でしたのに、ここに来るのに随分長く掛りましたね」

 何だか、言い方がおかしくないか。ま、先に行っても良いという話だし、とりあえず、話を合わせて置こう。

 「いつも女房と『行こう』『行こう』と話していたのに、なかなか来られなかったのですよ」

 するとオヤジが愉快そうに笑う。

 「貴方はなかなかしぶといし、勘も働く。だから、スンナリここの階段を上がらぬのも分かります。はは。どうぞ、真ん中を通って神殿までお上がり下さい」

 

 「真ん中を通って」だと。

 神社のことを知る者なら、誰でも分かる筈だが、真ん中は「神さまの通り道」だ。

 ここを通るのは神様や神職で、一般人はそれを邪魔せぬよう、参道の隅を通らねばならないのだ。

 「あ、まだ通っても良いのがいたな」

 もう死んで、幽界にいる者なども真ん中を通ってよい。

 

 ここでぎくっとする。

 「おいおい。真ん中を通ってよいってことは、もしや俺は・・・」

 ここで急に不安になる。

 「皆が俺のことを承知しており、俺はもっと前の順番だったと言ってたよな」

 やな感じ。

 こういう時には、普段は喧嘩ばかりしている女房が恋しくなる。

 傍にいて「何、バカなことを考えてんのよ」と叱りつけて欲しいもんだ。

 

 そこで、俺は後ろを振り返って、階段の下にいるだろう女房を探そうとした。

 すると、俺の三十㍍くらい後方に居たのは女房ではなく、あの妖怪顔の悪霊だった。

 「あ。アモン」

 アモンは俺のことをずっと眺めていたようだ。

 「アモン。俺はもうあの世に召喚されるってことか?」

 悪霊に問い掛けても、何も答えず、黙って俺を見ているだけだ。

 

 俺はここで考えた。

 「俺はあの世では、数十万匹の亡者と一緒に居る。現世と幽界の境界を行ったり来たりしているようなものだ。亡者たちは俺を敵視していないのだから、この階段の両脇に潜んでいる亡者たちに前に立って貰えば、まだしばらくは俺の順番を遅らせることが出来るかもしれん。何せ俺が生きていれば、さ迷い歩く亡者たちを然るべき道に戻してやれるから、亡者たちもきっと俺の味方をする」

 俺はそのことを頭の中で考えただけだが、その思索の中身はアモンに伝わったようだ。

 アモンが初めて口を開いた。

 「それもお前の一存によるけれど、その時は俺に立ち向かうことになるんだよ。それでいいのか?お前は耐えられるのか」

 うーん。コイツはもの凄く強力なんだよな。

 ここは思案すべきところだ。

 

 「とりあえず牛歩戦術だな。三歩歩いて四歩下がる方式だ」

 時間を稼いで、その間にこの先の対処法を考え出そう。

 俺はゆっくりと右足を階段の上に挙げた。

 ここで覚醒。

 

 春先の「防護服の男」は、世間一般に対してではなく、私一人に対し警告を発している場合がある。その場合、まず間違いなく「コロナに感染して数日で死ぬ」という運命が待っている。

 それなら、残っている時間はあと数か月以内。それもひと月、二月の話になる。

 今のうちに「やれることはやって置こう」と、改めて決意した。