◎酒豪女子
看護技師のエリカちゃんが「すごくお酒が好き」と言うので、「どれくらい飲むの?」と訊いてみた。
すると、答えが「2時間で7杯くらい」とのこと。
7杯。7杯って、何を7杯なのか。
それを確かめると、「ビールの大ジョッキ」ということだ。
2時間で大ジョッキ7杯なら、1杯がざっと15分だよな。
でも、その後に続きがあった。
「とりあえず」
おいおい。普通、最初に言う「じゃあ、とりあえずビールを」ってのが、「大ジョッキ7杯」ということか。
これでスイッチが入り、若かりし頃の失敗談を話した。
昔、まだ二十代の頃、夜のクラブ活動に精を出していた。
まだ院生で、昼に研究員のバイトをし、夜には丸暴と麻雀を打っていた頃の話だ。(さすがにここは言わない。)
モデルみたいなホステスとようやく食事をするようになり、「同伴(出勤)」でなく、休みの日に会ってくれることになった。
少し高級な和食屋で食事をして、その時も、ビールやら日本酒を飲んだ。その「おねーさん」はかなり飲める方なので、その段階で結構飲んでいる。
その後、場所を替えることになり、サンシャインのトリアノンに行った。ほれ、かなり上の階にあるバー?だ。
「好きなものを飲めば?」と言うと、「おねーさん」はカクテルを頼み始めた。
それもベースがウォッカだったりジンだったりと混ぜこぜだ。
一応、付き合うから、同じ調子で頼んだが、「おねーさん」は15杯くらいを平気で飲んだ。
ゲゲ。それじゃあ、酔いますって。
当方はかなり酔ったが、しかし、「おねーさん」は平気な顔をしていた。
最初から「飲み潰す」つもりだったのかもしれん。
まだ早い時間だったが(8時か9時頃)、送って行くことになり、タクシーに乗った。
しかし、当方はすっかり気持ちが悪くなり、高田馬場で一人だけタクシーを降り、練馬まで歩いて帰った。
体感では15キロはあるような気がしたが、実際には8キロくらいのよう。
バス停の長椅子を繋ぐように、休みながら帰った。
結局、口説くどころではなく、普通は最後に渡す「車代(という名のお小遣い)」も渡さなかったから、それっきりだ。
ま、あんなに飲まれたのでは、身が持たない。
てな話を調子に乗って話をしていると、それを脇で別の看護師のユウコちゃんに聞かれていた。
ユウコちゃんは、酒も飲めぬし、男性の「夜の生態」のことは知らない。
「ウチのお父さんもこういうことをしていたのかしら」という感想を言われてしまった。
そりゃ二十台の頃は誰でもしてる。ただ言わぬだけ。
ちなみに、後で麻雀の知り合いの丸暴に聞いたが、あのモデルみたいな「おねーさん」は、彼氏が丸暴だったらしい。
そういう「夜」関係の話については、丸暴の耳はもの凄く早い。
どこの会社にどれくらいの借金があるかなども、すごく知っている。ま、これは金融(金貸し)が生業だからということだ。
それなら、「おねーさん」にちょっかいを出さずに済ませてよかったということになる。
「いつか必ずネタになる」と踏んで、「夜に暮らす」男女のことを観察していた。社会学畑の研究者だったし、十分に研究の素材になりうる。
当時も「俺が色んな所に顔を出すのは研究のためだ」と嘯いて、散々遊んでいた。(ここは所謂「論点ずらし」だ。)
研究論文にはならずとも小説のネタはなると思うが、ジャンル的に送り先が無い。
物語にするには、リアル過ぎる情報が多くなっている。