◎サトウさんの話
看護師のサトウさん(五十台女性)は年が近いこともあり、身の回りの話をよくする。さっぱりしたオバサンだから、「ダンナの立場から見ると、こういう奥さんとは暮らしやすいだろう」と思う。
これは先日のこと。
サトウさんの息子が「歯医者に行く」と言うので、サトウさんは自分も一緒に診て貰うことにしたそうだ。
息子は大学生で二十歳を過ぎている。
窓口で息子と一緒に手続きをしたが、先に息子の方が呼ばれ、中に入ったらしい。
すると程なく助手が来て、「ではお母さんもどうぞ」と言った。
中に入ると、助手は「こっちに座って下さい」と、息子の治療代の脇に丸椅子を置いた。
「患者」ではなく「付き添い」だと思われたのだ。
息子の方はすぐ傍に母親が座るので、「何でそこにいるの?子どもみたいじゃないか」と言ったそう。
サトウさんは、「息子が二十歳を過ぎているのに、母親が付き添ったんじゃあ、本物のマザコンだわね」と笑っていた。
今の二十歳周辺は、ぐりぐりの「ゆとり世代」だから、案外、現実に「親が付きそう」ことも起こっていそうだ。
今やその「ゆとり世代」が親になり、その子どもが小学校に通うようになっている。
家人によると、「家でリモート学習ばかりやっているから、人との付き合い方がよく分からなくなるかもしれない」と言う。
勉強もやはり集中できないから、学力が落ちているそうだ。
「ゆとり世代」の子らは「リモート世代」と呼ばれるようになるのかもしれん。