日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎夢の話 第1K1夜 試験

夢の話 第1K1夜 試験

 十日の午前三時に観た夢です。

 

 我に返ると、俺は大学の「中教室くらいのサイズ」の部屋にいた。

 周囲には二十歳くらいの学生然の若者たちが、俺と同じように机に向かっている。

 「ありゃりゃ。この子らは若いのに、俺一人オヤジジイだよな」

 しかも、自意識よりも五六歳ほど年を取っている気がする。

 

 考える間もなく男が入って来た。

 「では、試験をやります」

 男は問題と解答用紙を皆に配る。

 「時間が短いですから、すぐに始めて下さい」

 何となく「三十分だな」と思う。

 

 とりあえず問題を見ると、総て英語で書いてある。

 普通使うようなヤツではなく、学術論文だ。しかもどうやら工学系。

 「おいおい。文系ならともかく、理系じゃ単語すら分からん」

 だがそれだけではなかった。

 出題が二問あり、もう片方は数学だった。

 高等数学のようで、ひたすら数式が並んでいる。

 「何をどうしたい式なのか、頭に解題を付けてくれなきゃ、コイツは書いた本人しか分からんだろ」

 少し腹が立つ。

 

 「ま、こういうのは夢でよくある」

 幸か不幸か、俺は夢の中で「これは夢だ」と自覚出来る。頭の一部が常に覚醒しているからかもしれん。そのせいなのか、夢の大半を記憶したまま目覚める。

 

 横にいた女性学生が書き終わったらしく、椅子から腰を上げた。

 目元の涼しい美人だ。

 「たった十五分で終わったのか。こういう目パッチリの美人は勉強はあまり得意でないことが多い筈だが」

 答案用紙がチラッと見えたが、文字がびっしり書いてあった。

 

 三十分が経ち、時刻が来たので、仕方なくそのまま提出することにした。

 書けたのは、ごく一部だけ。

 「これじゃあ、三点だな」

 その時、教室にはほとんど学生がいなくなっていた。皆が途中で書き終わり、教室から去ったのだ。

 残っていたのは俺と、教室の反対側にいた一人の男子だった。

 その学生が立ち上がり、教員の元に答案用紙を届けた。

 

 「あの学生は見たことがあるな。確か・・・」

 大学で同じクラスだった「オカムラ」という人だ。

 彼の横顔を見て、思わず呟いた。

 「大丈夫か。何十年も経っているのに、唐突に俺の夢に現れるのは、あまり良い知らせじゃないぞ。君は無事でいるのか」

 俺は勘が働く方だからな。虫も良く知らせる。

 男子学生は自分の机に戻り、筆記用具を片付けている。

 ここで覚醒。

 

 目元の涼しい女子学生は「望むべき自分の姿」だとしても、もう一人の男子は一体何を象徴しているのかが分からない。

 そろそろ一年で最も「あの世が騒がしい季節」に入る。