◎夢の話 第1K7夜 鰐と戦う
ニ十九日の午前五時に観た夢です。
ふと我に返ると、俺はどこか知らぬ水辺に佇んでいた。
観光地のようで、周囲には数十人の水着を着た人がいる。
周囲をぼけっと眺めていると、水際に高齢の女性が立っているのが目に入った。
白髪で、どこか母に似ている。
日頃、俺は白髪の女性に対し無意識に親切に対応する。佇まいが母を思い出させるからだ。
老婦人の前の方に目を遣ると、微妙に水が動いていた。
水底に何かがいて、岸に近づいているのだ。
「まずい。鰐だ」
すぐに飛び起きて、声を張り上げた。
「下がって下がって。すぐ近くに鰐が寄って来ている!」
老婦人が「え」とこっちを向いた瞬間、鰐が水面から躍り出て、婦人を丸のみにした。
「おいおい。冗談じゃねえぞ」
サイドテーブルにナイフがあったので、それを掴む。
お祓い用の小刀だから、ちと心許ないが、今はしょうがない。
俺は水辺に走り寄り、鰐に飛び付いた。
水の中では鰐の方が有利で、そもそもそいつは七八㍍の巨大な体躯を持つ。
絶望的な状況だが、俺は鰐の弱点が眼だと知っていたから、背中に馬乗りになると、片目ずつナイフを突き刺した。
その後で鰐の顎を抱えるように押さえつけ、腹にナイフを突き立てた。
喉元から胴体を縦一直線に切り裂く。
「あの人が息を止めていられるのは数分だ。早く外に出してやらないと」
でも、深くナイフを入れ過ぎると、老婦人を傷つけてしまう。
ざくざくと鰐の腹を裂くが、なかなかはかどらない。
「俺はあの女性を助けられんかも」という思いが頭をよぎる。
だが、頭の中にもう一つの声が響く。
「今度は絶対に助けてやるからな」
俺はぐりぐりとナイフに力を込める。
ここで覚醒。
解釈の難しい夢だ。
オーソドックスには、最初に見る異性が自分自身の変化だから、「母に似た女性」が私自身になる。
「鰐」は困難や脅威の象徴で、私にとっては病気や諸々の危機を指すのだろう。
私自身が困難に負けまいと立ち向かおうとしている。これがひとつ目だ。
この老婦人が私自身でない場合もあるが、その場合は愛情だ。困難はあるが、誰かを守ろうと考えている。これが二つ目。
もう一つは占いによらぬ私なりの見解だ。
実際に危機に瀕している人がいるが、その人は目の前の危機に気付いていない。私は事前に自分や他人に降りかかる異変に気付くことがあるので、「教えてやれ」と内なる声が言っている。
ぎりぎりだが、今のうちに手を打てば助かるかもしれぬ。
今では目視で「煙」が見えるようになって来ているので、おそらくそれが役に立つ。