日刊早坂ノボル新聞

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◎古貨幣迷宮事件簿 「鹿角の使い方」

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鹿角を用いた青錆の除去法

◎古貨幣迷宮事件簿 「鹿角の使い方」

 今回の処分品のうち、桃猿駒は手頃な付け値だったせいか一瞬で売り切れたのだが、一枚だけ残っていた。

 これを見ると、なるほど表に青錆が少し出ている箇所があり、これが嫌われたということだ。

 これは採拓の際に、水分をよく拭き取らなかったことが原因で生じたものだ。

 要は「最近着いたもの」ということだが、「新しい錆は簡単に取れる」ので、出品を取り下げ、実際にやってみることにした。

 もちろん、薬品などは使用しない。

 昔から「錆落とし」に使用されて来た手法に、「象牙」または「鹿角」でこそげ落とすというものがある。象牙は高価なので実用的には鹿角になるわけだが、鹿角は錆よりも固く、金属よりも柔らかい。このため、貨幣の表面を鹿角で擦っても、その貨幣に傷が付き難い一方、錆だけを落とすことが出来る。

 通常は鹿角を裁断して先を尖らせ、これを軽く押し当てて錆を除去するが、今回は角をそのまま使用した。

 あとは「慣れ」で、加減は練習で覚えるしかない。

 鹿角は鹿の生息地に行かずとも、ネットで四五百円で入手できる。実際には分断して使うので、一個数十円だ。

 ハンディクラフト用の電動研磨機の先にこれが付けられれば、さぞ便利だろうと思う。

 

 結果はご覧の通り。

 まだ二度目だが、錆の大部分が取れている。 

 角の方が地金よりも柔らかいと言っても、強く擦ればそれなりに傷が付くから、軽いタッチで撫で、様子を見ながらこれを数度繰り返す。

 概ね3回くらいできれいになる。

 当たり前だが、プレス貨幣には向かない。

 意匠が細かい場合には、角の先が届き難いので、電動カッターなどで細切りにし、角先が細部に届くように工夫する必要がある。

 慣れて来ると、錆を見た瞬間に「落ちる錆」か「落ち難い錆」の区別がつくようになるので、「落ちる」と分かれば、別に「あえて落とさなくとも同じ」と思うようになる。

 

 難が無くなったので。値上げして再出品する。

 背面に玉状に崩れた箇所があるが、偶然ではなく故意にこのようにしたのだろう。

 通常の砂笵式でこれは出来ない。

 

追記)千年経過したメノウ色の錆は容易には取れない。最近の付け錆は容易に取れるので、真贋鑑定にも一部適用できると思う。ただ薬品を使っで偽造した錆は、簡単には落ちないので、よく見極めることが必要だ。

追記2)改めて見ると、桃猿駒には独特の味があり、つくづく良い絵銭だと思う。