◎予告された通りの展開に(636)
血圧が下がらぬのと不整脈が酷いことで、循環器の専門医に診て貰うことになった。
すぐに予約を入れ、主治医のところに行った。
半日に及ぶ検査の後、私の主治医は「左側にあまり動いていない箇所がある」との診断を下した。梗塞箇所があるということだ。
検査当初の心電図から、「ピーピーピ-ピ-」と変な音が鳴っていたし、エコーでは最初は若くて小ぎれいな検査技師だったのに、途中で「確認のため」とベテランと交替した。
「やっぱりね」
ま、想定されていた事態だ。
医師が続ける。
「中を見ないと程度が分からないので、カテーテルで調べましょうか」
冗談じゃない。
「いえいえ。別に何ともありませんよ。少し不整脈があるくらいで」
もちろん嘘だ。今は生活と人生が壁に当たっているので、十日も休んだら即破綻する。
それに、医師から見れば、私はまだ死線上に立っている訳ではないので、最初の検査では研修医の練習台になる。
(「今は微妙な時期だから、たぶん、それが原因で俺は死ぬなあ」。前回もそのパターンで、手際の悪い新米外科医のために往生した。)
「症状が少しでも重くなったらすぐに来ますので、まだ結構です」
「ではCTを細目にやりましょう。それでもある程度分かります」
病院を出て、すぐに神社に参拝した。
もちろん、自身の状態を確認するためだ。
ガラスに映る姿を見れば、大体の状況が分かる。
うーん。なるほどなあ。
(ここは解説しても伝わらないので省略。どうせ説明しても分かる者はいない。あの世を実践的に調べている者など滅多にいない。いるのは興味本位の者だけ。)
しばらく前から、胸に煙玉が出ていたが、これは「生体反応」「生理的反応」による煙玉で、たぶん、磁気異常が起こることによる。
これまでの人生の各局面で同じような煙玉が出たが、私はその都度入院している。
今回も同じ状況で、かなり厳しい局面だ。しかも、今は人事が限界に来ているから、よほどのことがない限り休むわけには行かない。検査だけでは済まず必ず治療に進むから、相当期間入院することになるわけだが、そんなのが許される状況ではない。
唯一の救いは、私は直感が働き、自分自身に起きることが殆どの場合、事前に分かることだ。
しかも眼で分かるようなシグナルも出る。
それと、新しい「巫女さま」が派遣されて来たから、死霊が私に手を伸ばしてもソコソコ防御して貰える。
ま、もちろん、自分の行く手は自分の手で切り拓かねばならない。
巫女さまが背後についたので、今月中に死ぬことは無くなったが、秋までにこの世を去る可能性がある。あとは心臓があとどれくらいもつかという話になる。
主治医と話をしている時、頭の中に浮かんだことは、「俺と同じくらいの年恰好のこの医師が俺より先に死んだら、病状を知る者がいなくなってしまうから、ちょっと困った事態になるなあ」ということだ。
しかし、そこでハッと気付いた。
(要するに「この医師は俺より先に死ぬ」ということだ。)
この手の直感はほぼ100%に近いくらい当たる。
思わず「先生。先生は具合が悪いところがあったりしますか?」と訊いてみた。
すると、「ありますよ。このトシですから」との答えだ。
「気を付けて下さいね。先生がいないと私は困ります。ハハハ」
ま、次に診察を受ける時に、具体的な「何か」を見付けたら、はっきり伝えようと思う。
もはや余生が秒読み態勢に入ったので、誰に対しても同じ姿勢で接しようと思う。
もうはっきり口に出してしまおう。それが嫌なら、私の前に立つな。