◎古貨幣迷宮事件簿 「分類が取り違っていた件」
納戸や外の道具小屋の隅から幾らか古銭が出て来た。なるべく水面下で譲渡したり、差し上げたりしようと思うが、まだ数が多い。例によって、近代貨雑銭まで梱包されていた。ややウンザリ。
ま、差し迫った危機は去ったので(鬼が笑うか)、順々に処理して行こうと思う。
もはや所持していても仕方がないし、自分の死後に残っていれば二束三文に化ける。
実際、「減らそう」と決意してから十年掛かっているが、八割九割に達したとはいえ、まだ忘れていた品が出て来る。
今日から在庫整理を再開しようと考えるわけだが、興味もパッションも無くなっているので、まずはリハビリから。
鉄銭のブックを開いて見ると、ホルダーに書かれた分類名と中身の品が合わなくなっていた。幾度か取り出して撮影している間に取り違えたものとみられる。
それだけ集中力を欠くようになっていたということだ。
鉄銭については、主要な銭種を幾セットか知人に差し上げている。もしかすると、気が抜けており、そこでも取り違えを冒しているかもしれぬ。
分かる範囲で訂正を加えようと思う。
最初にこれをやっていれば、他の品について事務的に処理できるようになると思う。
01 八戸 縮字写し
「八戸縮字」、すなわち、鋳写し母を作成して、そこから出来た通用銭ではなく、八戸領内の「縮字写し」、すなわち縮字本銭を改造し母銭に仕立てた改造母で作った鉄銭である。改造母系統の鉄銭は、割と散見できるが、「八戸縮字」は母銭同様に発見が困難だ。面文が浅くなることから、判別自体が難しい。
02 舌千小字
舌千小字は葛巻銭に最も近い銭種だが、職人が持ち出して他座でも作ったようで、目寛見寛座の仕様の品あり、その他の分類が困難な密鋳銭にも含まれている。
葛巻からの転用ではないかと思うが、もちろん、証拠はない。
ここでは仕様の参考として掲示した。
03 目寛手 小字背千無背
ホルダーには「目寛手縮字」と記していたが、中身が違っていた。前に記録を残した時点で取り違えていたかもしれぬ。関心が薄れ、よく見ずにそのまま掲示したようだ。
製作・仕様は目寛見寛座の厚く小さいつくりになっている。小字背千からの変化だと分かるのだが、この座の千無背のしっかりした母銭はこれまで見たことが無い。
書体の違いは僅かで、「永」の字が縮字からの変化ではない。
本銭と見比べるのではなく、八戸領に入った時点のものと比較する必要があり、検証が面倒だ。あとは砂づくり、型づくりの独自性に照合すると、どのような変化が生じやすいかを推測できる。
小さく厚い鉄銭については、多くの人が良く確かめずに「目寛」「見寛」と分類して来たと思う。だが、よく見ると様々な銭種および変化があるから、固定観念に囚われずゼロの状態から眺めるべきだ。そしてその方が面白い。
04 見寛
比較のため掲示したもの。並べてみると、小字背千からの変化ではないことが分かる。型づくりの手法が独特で、銭容が著しく変化しがちなのだが、そこにもルールはある。鉄銭は、まずは「地金の面から柱を立てる」と先に進めやすい。
目寛見寛座では、母銭の絶対量が足りなかったので、鋳写し母を一定量作成することで銭型の統一性を保とうとした。通用銭改造母からでは、規格が不揃いとなり、出来もまちまちになる。可能な限り「多くの枚数を作ろうとした」ことで、独自の銭型・銭容が形成された。
さて、今晩あたりから、再び在庫整理を再開する。
注記)いつも通り一発殴り書きであり、推敲や校正をしない。あくまでエッセイの範囲ということ。