

◎古貨幣迷宮事件簿 「銀貨は銀地金」
過去二十年くらいの間、「普通の状態の並年銀貨」は、銀地金相場よりも低い相場で取引されて来た。昭和から平成初期では、状態イマイチの小型五十銭銀貨は概ね百円前後だったが、それでも汚れた並年を買う人がいない。
一時、銀の相場が高騰し、百円銀貨が三百円を超えた時があったが、この時には、さすがにコイン店から低額銀貨や現行百円が消えたことがある。
現行貨は銀地金として溶かすことが出来ぬので、この際は香港など外国で売られたようだ。百円で買って三百円で売れるなら、かなりの利益が出る。
その後も似たような状況が続き、「あまりきれいではない並年銀貨」は、銀地金の方がコイン相場よりも上になる。
だが、実際に古銭会に出してみると、何百枚とまとまっている銀貨については、割と売れ行きが良かった。
先輩に事情を聞いたが、「まず状態のよいものを抜き出し」、「年号で揃えるなどして」出品すると、割合買い手が付くとのことのようだ。
買い取りが銀地金ベースであれば、銀買い取り価格で処分して欠損が出ず、コインとして売れた分だけ上乗せになる。そういう発想だ。
ま、それもコインに全般に興味を持ち、近代貨に愛着を持っているから出来ることで、パッションを持たぬ者には通じない。
「売った瞬間に欠損が確定する」となれば、それも当然だと思う。(私のことだ。)
近代銀貨には痛い思い出しかなく、最初から銀地金取引にすれば問題が無かったと反省するところがある。一定のルールに従っていれば、時の相場でプラスマイナスはあれでも、納得できるところがある。
という背景に基づき、「使用済み銀貨」については、基本を地金取引に置くことにしている。銀地金取引で、歩留まり率(溶かし賃の控除以外の割合)を高めるには、まとまった重量を揃える必要があるが、それは持ち主自身が考えることだ。
コイン型は銀杯など銀器類よりも、控除される工賃が少ないから、取り置くには好都合だと思う。
ポイントは、
「きれいな品を取り置く」
「年号で揃える」
用途で使えるということになる。あとは地金で処分することになる。
三十年くらい前に、実際に近代貨幣の特年がどれくらいで拾えるかを実験したことがあるが、小型五十銭の場合、特年(昭和十三年)は、一万枚を検分しても見つからないようだ。
話に聞くところでは、見つかった事例は「ロール」で出たそうだから、市場流通はほとんどしなかったようだ。
銀貨類は地金業者に総て出したつもりだったが、椅子の下からまた出て来た。
割合色のよいものがあるので、一旦周囲にはかり、それで入手希望が無ければ、まとめて地金業者に出すことにする。
秤量計には誤差がある場合があるから、業者の買い取り単価から少し値引きした売価とした。
銀相場には上がり下がりがあるわけだが、暫くは円安基調が続くから、急には下がらぬと思う。