日刊早坂ノボル新聞

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◎古貨幣迷宮事件簿 「仙台鯛釣恵比寿などの話」

◎古貨幣迷宮事件簿 「仙台鯛釣恵比寿などの話」

 画像は「年末盆回し」の出品物Z14番の品だ。

 仙台領の絵銭の名品に「大波恵比寿」がある。鯛釣恵比寿の下部に波がうねっている意匠であるが、これは仙台オリジナルの絵銭だとされている。(何かしらの根拠があったが、今はもう忘れた。)

 大波恵比寿の他に「小波」もあるが、多くは波が殆ど目立たぬ程度で、元々は他領から入って来たものだろうと思う。江戸や大阪でも散見されるはずだ。

 だが、仙台領では江戸期後半から七福神信仰が盛んになり、これは明治まで続いた。

 絵銭の領域でも、七福神銭の中核は仙台領で、そこから南部にかけてとりわけ分布が多い。

 出自が判明している品があると、それを基準にして、他の銭を物差しにかけることが出来る。仙台銭の典型的なパターンは地金色が白から黄色であることと砂目だ。

 「大波恵比寿」の製作は丁寧で、精美な出来だ。絵銭座の作と言うより、鋳銭職人が作ったかのようなつくりになっている。寛永銭の背千の母銭や、仙台当百の地金にも白系、黄色系があり鋳物づくりの技術という点で共通点があるように感じる。

 この辺は地元の人に聴けば詳細が分かると思う。

 この大波恵比寿のつくりとよく似た配合で、つくりが少し劣る銭群があり、銭径も縮小するところから、周辺地域の写しではないかと思われる品がある。

 地金が黄色で、作りが劣るが、本来の仙台絵銭とも南部絵銭ともつかぬ品については、私はK村さんのコレクション以外に見たことが無い。

 寛永銭の称江刺銭や、これに表面の印象が似た江刺絵銭の他に、この地方独特の絵銭群が存在すると思うが、正確な線引き方法が分からない。

 ここは「返す返すもK村さん」の件りに話が行き着く。

 

 これらの中で最も珍しい品は、最も見すぼらしい「笑い恵比寿」だ。意匠自体は江戸でも似たようなものがあるが、これは江刺絵銭で写しかあるいは真似て作ったものだ。

 江刺絵銭は寛永銭の称江刺銭と砂目などが似ているのだが、仕上げの細部が違う印象がある。詳細は分からない。

 面子銭についての出自の方はまったく分からない。前々回に「階段下の納戸にあった絵銭」のことについて記したが、七八十枚の絵銭の中には厚肉の面子銭が沢山あった。

 無紋のものも多かったが、この恵比寿と同じ品があったと思う。この品は実際に使われており、背側に少し欠損がある。この場合の欠損は「難」を指すのではなく、「確からしい」という誉め言葉だ。時代を経た品なので、使っていない品よりも、きちんと時代を経て来た品の方が考証に耐えうると思う。

 

 さて抽選会の登録は十三日の24時受付締切となる。

 登録が可能であれば、一等で1/18、掲示板当選で5/18となり、かなりの当選確率になる。何ら負担が無く、この確率で賞品が得られるのでは、やや「サービスが過ぎる」きらいがあるので、出品を少し遅らせている。統計上、5%を上回る当選確率になると、「起こり得る」水準になるが、最初からその水準を超える設定だ。五人くらいで収まれば、「17位」に「ブービー賞」を追加しようと思う。

 

閑話休題> 抽選札それとも木戸札?

 二十年前、書き物の間に札が一封混じっていた。すぐには解かずに、周囲を観察し、また同じものが出て来るのを待った。もし同種のものがあれば比較できるし、元にも戻せる。だが、そろそろ頃合いと見て、解いて見ることにした。

 もしかすると、富札などで抽選用に用いたものかもしれぬし、チケット用途かもしれん。

 ひもは「こより結び」で商人が結んだものだと思う。

 解いてみると、中は「四」番と「五」番の札が十数枚ずつだった。

 同じ数字の札が複数あるのでは、例えば、四等席と五等席のように、種別を分けるためのものの可能性が高い。芝居を観る時に座席を分かる用途などだ。

 はっきりしたことは分からぬが、ひとの暮らしを彩る「何か」であったことは確かだ。