日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎あの世の淵

あの世の淵

 最近、血圧がやたら下がるようになった。降圧剤や拡張剤を飲んでいる影響もあるので、薬を減らしたが、時々、80とか、あるいは60くらいまで下がる。

 母の亡くなる一年前から半年前がそうだったから、抵抗力が落ちているという意味だと思う。

 

 アルコールは血管を拡張するので、いざ限度を超えるとガガっと血圧が下がる。ロックなら三杯くらいがそのラインだ。

 チュ―ハイのグレープジュース割なら、これが二杯目で起きるので、飲めるのは一杯だけ。グレープフルーツは血管拡張剤を助長するわけだが、これは処方箋に書いてある通り。アルコール+グレープフルーツで効果は二倍になる。

 酒飲みは概して血圧が低いことが多いが、アルコールが切れるとががっと上がる。

 

 昨夜はWBCを観ながら、つい焼酎ロック三杯を超えてしまった。途中で寝入ってしまったが、二時間後に目覚めた。

 酩酊した時のようにフラフラして気分が悪いが、胃腸に異常が無くゲロ気分も無い。

 「イケネ。低血圧症だ」と思ったが、後の祭り。

 次に始まるのが下痢なので、よろよろとトイレに行った。

 これも症状のひとつで、体内のものを全部外に出す。

 起きられなくなった後に発症すると、もはや止められないので、パンツを汚す結果になる。

 トイレから戻ると、やっぱり本格的に始まったので、もう一度トイレに。水みたいなヤツが、それこそ胃から下の内容物が全部出た。

 

 手足が動かなくなっているので、居間までよろけながら戻り横になった。

 しくじるとこのまま死んでしまう人もいるが、「ま、そこまではいかんだろうな」と思いつつ、気が遠くなる。

 ここまでが事実関係だ。

 

 ここから先は「あの世現象」の話。

 再び寝入るまでは数分程度だったが、周囲から音が聞こえた。

 窓の外の砂利を踏む音で、家の前から今の窓ガラスのところまで来た。一人ではなく三人くらいの足音だ。

 家の外壁に手を突いたような「タン」「トン」という音が響く。いわゆるラップ音よりもずっと大きい。

 

 その次がスマホだ。

 テレビ台にスマホを置いていたが、これに勝手に電源が入り、音声入力のスイッチが入った。

 「イヤホンのモジュラージャックの不具合で起きる」ことになっているが、それとは別だ。この時には繋げておらず、電源を切って置いてあっただけ。

 既に動けぬ状態だったが、一年前の「憑いた。憑いたぞ」を思い出した。

 たぶん、血圧が六十かそれ以下に落ちている筈で、身体機能があまり働かぬ状態だ。要は「あの世に近い」状態だということ。

 

 頭の方は割と明晰で、「最初の足音や壁に触れる音は心神耗弱が生み出した幻聴かもしれんが、スマホは明らかに違うだろうな」と思ったところで、意識が飛んだ。

 

 朝、目が覚めて、昨夜のことを思い出したが、「もしかして」と気付いたことがある。

 当方は心神喪失状態に近い状態で、いわばあの世との垣根が低くなっていた。そこに、わざわざスマホの電源を入れて、「声に出して言ってください」と促すとのは、あちら側が「交信を求めている」ということではないのか。

 あの状態ではなかなか難しいのだが、「お前は誰だ」と声を掛けたら、案外、すぐに答えたかもしれん。

 一度交信できれば、たぶん、頻繁に更新できるようになる気がしているが、その先にあんまり良いことは待っていないだろうとも思う。

 次に同じことが起きた時に、話し掛けるかどうかを今は思案中。スマホなら録音もできる。

 もちろん、その音声を公開して、多くの人に聞かせてしまう。

 あの世の「声」を聴いた瞬間に「扉が開いてしまう」人がいるから、その後、その人には暗く冷たい道程が待っている。だが、結果的に当方の同類が増え、あの世に関する理解が深まる。

 だが、これも命懸けになる。イタコや祈祷師のトランス状態どころではなく、まさに「死の淵に立つ」ということだ。リスクの方が大きいし、単なる好奇心の延長にある話だ。

 他人に「ウケる」「受け入れられる」かどうかなど、どうでもよい。勝手に生きたって、死ねば全員が事実を目にする。問題は取り返しがつかぬことだけ。 

 

 ところで、人間は不審な出来事があると、「簡単で、気楽な答えを選び、そのように思い込む」傾向がある。

 所沢に住んでいる時には、アパートが神社の下にあったのだが、エアコンやテレビが異常に点滅することがあった。

 「これは近所の人が同じ型の機種を使っていて、リモコンが同じだから起きる」

 そう納得させていたが、考えてみれば、その近所の人は、スイッチを十秒ごとにバチバチと入れたり切ったりしない。

 十回くらい連続して入れたり切ったりしたから、理由は近所の人ではないということ。

 3LDKだったが、ひと部屋はやたら湿気が多く、天井から水滴が滴るほどで、その部屋からは時折どしんどしんと物音が響いたので、使わずに物置にしていた。

 床に水溜りが出来るのでは使えない。天井裏に配管が通っているわけでもないのに、何故か水滴が落ちて来る。

 この頃は自分の会社のことで頭が一杯だったので、家のことは放り捨てていたが、家人や次女が喘息で苦しんでいたのは、異常な湿気と「別の何か」の影響だったと思う。

 引っ越しをしたら、家族の病気はあっという間に治った。

 早く気付いて手を打っていれば、家族が病気に苦しむことも無かったのにと、今にして思う。

 

追記)たった今、思い出したが、以下は少し怖ろしい話だ。

 朦朧としている時に、何者かが「呪詛の掛け方」を教えてくれた。深夜に杉の樹に釘を打つ必要はない。

 

 具体的には次の手順による。

 ひとに見られぬように、山の奥に入り、穴を掘って地中に相手の住所氏名を書いた紙を入れる。それから、その上で生き物を殺して一緒に埋める。猫とか烏、鶏などだ。

 あとひとつ「※※」を入れるのだが、そこからが夢の中だったので、はっきりと思い出せない。頼みごとをする悪縁(霊)の名前だったかと思う。

 ま、いずれ思い出すか、あるいは訊き出せばわかると思う。

 

 呪詛は有効だが、いずれにせよ、自分がそのツケを払うことになる。この世にもあの世にもタダのものはない。

 ということは、スマホで「連絡して来い」と合図を送って来る者は、紛れもなく悪縁(霊)の仲間だったということだ。