日刊早坂ノボル新聞

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◎夢の話 第1139夜 「泊めてちょうだい」

夢の話 第1139夜 「泊めてちょうだい」
 6月12日の午前3時に観た夢です。
 夢の中の「俺」は現実とは全くの別人格で、共通点はない。

 俺は三十歳。フリ-ターをしている。
 酒を飲み、帰宅途中に歩くのが嫌になり、公園のベンチに座った。駅前のコンビニで缶コーヒーを買ってあったので、それを飲んだ。
 ボケッとしていると、どこからともなく二人の女が現れた。
 二十歳そこそこの娘たちだ。二人とも小さめのボストンを抱えている。
 そのうちの一人が口を開いた。

 「ねえ。この近くの人?」
 「そうだよ」
 娘は俺の表情を確かめるように見ている。
 「ちょっとお願いがあるんだけど」
 「何ですか」
 「今日、あなたの家に泊めてくれない?」
 「え」
 もう一度、娘のことを見返す。
 ジャンパーにスカート。今時の若い姉ちゃんだが、どこか薄汚れていた。
 俺は頭の中で考えた。
 「ははあ。この子らは、どこか田舎から出て来て、繁華街の路上に座っている奴らだ」
 金がある時にはマンキツなんかで寝泊まりするが、無ければ路上で寝る。いよいよ困ったら、見ず知らずのオヤジに拾って貰い、そいつの家かホテルに行き、そこで風呂に入って寝場所にする。
 だが、この子らは如何にも薄汚れており、エロオヤジにも敬遠される筈だ。だから俺みたいな若い男に声を掛けた。

 「タダで泊めてとは言わないよ。私が相手をしてあげるから」
 ひと晩のお礼に、片方が俺とセックスをしてくれると言う。
 なるほど、若い男なら「セックス」の餌がさらに効く。
 もう一人の女の方を見ると、ショートカットの大人しそうな娘だった。いかにも地味に見えるから、男受けのする方が渉外役になる。
 殆ど路上にいるからだが、数日で埃塗れになる。コインランドリーで洗濯をするのだろうが、金が無ければそれも出来ない。

 たまにはベッドで寝たいし、ゆっくりと湯船にも漬かりたい。
 奥の手がこれだった。

 「ああ、いいよ。俺のアパートは俺の部屋以外は空き部屋だし、他から文句を言われることもない。風呂もあるから、体を洗って、たっぷり休むと良い。明日は朝から洗濯をして、少しきれいにすることだ」
 これで女たちが少しくほっとした表情を見せた。
 「だが、俺の相手はしてくれなくとも良い。俺も田舎から出て来た者だし、困った時はお互い様だ」
 ま、男なら面倒は見ないけどね。

 それから三人で俺のアパートに向かった。
 俺のアパートは築60年の木造住宅で、部屋は8つあるが他は空き部屋だ。建物が古いこともあるが、それ以上に人が寄り付かぬのは、このアパートには、いわゆる「事故物件」が3部屋あるからだった。
 実際、深夜になると、他の部屋からガタガタと物音がするし、しくしくと女の泣く声も聞こえる。
 風呂付なのに部屋代が月に2万でかなり安いから、たまに入居する者も来るが、大体は1週間で出て行ってしまう。
 だが、俺はそういうのは別に平気だった。
 俺は部屋の隅に小さな焼香台を置き、香炉と鈴を供えている。
 女が泣き始めたら、お焼香をし、「チーン」と鈴を鳴らす。
 「俺はこれから寝るから、静かにしてくれよ」
 どういうわけか、それを俺が言うと、ピタッと声が泣き止むのだった。

 「じゃあ、まずは風呂に入りな。きれいな着替えはあるのか。無ければ俺のTシャツと短パンを貸してやる。君らが風呂に入っている間に、俺は飯を炊く。カレーを作り置きしてあるからそれを食べると良い」
 娘たちがバッグを床に置き、風呂場に行った。
 着替えを持って行かぬところを見ると、やはりそれもないわけだ。
 俺は衣料箱から、着替えとバスタオルを取り出し、洗面所に置いた。旅行をした時に、ホテルの歯ブラシを貰っていたから、これも二本備える。

 ご飯を炊き、カレーの鍋を温めていると、娘二人が出て来た。
 汚れを落とし、顔が白くなっていた。
 「おお。野良猫みたいに埃臭いと思っていたが、風呂から上がってみれば別嬪さんだったな」
 とりわけ、地味だと思っていた方の娘が別人に化けていた。
 高校の時にもいたよな。眼鏡をかけて、いつも下を向いている女子なのに、街を私服で歩いているところを見たら、まったくの別人だった。落差が著しいから、その瞬間ドキッとした。

 この俺の視線を、もう一人が見ていた。
 「やっぱり相手しようか。でも二人なら別料金だよ」
 「コンニャロ。俺をからかってるな」
 もちろん、俺にそんな気はない。「窮鳥懐に入れば猟師もこれを殺さず」と言うだろ。
 困っている者の頭を踏むようなことはしない。かたや困っていない者ならどんどん頂くわけだが。

 「渋谷に来てどれくらい経つの?」
 明るい方が「2年」、地味な方が「半年」と答えた。
 「もう同じ暮らしに飽きた頃だな。事情があって今の生活になっているのだろうけれど、このままじゃいられんだろうから、ゆくゆくは何か働き口を見付けて自活した方がよい。それまでここに居てもいいよ」
 働くには住所や身分証が必要だが、とりあえず住所はここでよい。身分証にも当てがあった。
 「この部屋の隣には、佐々木ミドリという女性が住んでいた。ホステスだったが、片付けが下手で部屋の中がゴミ屋敷だった。あまりにも酷いから、見るに見かねて俺が整理整頓してやった。それからそのミドリちゃんは月に1万円で俺に毎日の部屋の掃除を頼むようになった」
 そのミドリちゃんは、ある日突然、姿を消した。
 「二三日お客さんと神奈川に行って来る。部屋の物は好きに使っていいから」と言い残して出掛けたが、それっきり帰って来なかった。
 それが、あのルーシー・ブラックマンさん事件の半年前くらいの話だ。あの犯人の織原にはどれだけ余罪があるか分からぬほどだったから、あるいはミドリちゃんも。
 部屋はそのままだ。家主は八十のバーサンだが、既にかなり耄碌して訳が分からなくなっていた。今の俺はそのバーサンの面倒も見ている。

 「隣の部屋のミドリちゃんは、たぶん、死んでいる。部屋には免許証や保険証があったから、それを借りると良いよ」
 年格好は似たようなもんだし、化粧で顔の印象も近付けられる。
 難点は、二人目三人目の佐々木ミドリが出来るってことだけ。
 これで、二人の表情が明るくなった。
 決まった居場所があることの大切さが、よほど身に染みていたようだ。

 俺は台所に向かいつつ、この先のことを考えた。
 「家族が増えれば、生活費もかかる。これは手分けして対応する必要があるな」
 生きてゆくのは絵空事ではなく、現実の生活問題があった。
 ここで覚醒。

 後半ははしょった。素材を捻ればストーリーになるかもしれん。

 夢ではその後、「俺」のアパートには女子たちがどんどん増え、「俺」は宗教の教祖みたいになった。
 「佐々木ミドリ」は十二人に増え、「俺」はそのミドリと結婚した。戸籍は一人だが、気が付いたら十二人全員が妻になった。