日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎古貨幣迷宮事件簿 「九月期盆回しについて(続きイ)」

◎古貨幣迷宮事件簿 「九月期盆回しについて(続きイ)」

 いざ旧PCを切断すると、そのまま立ち上がらなくなる可能性が高いので、しばらく点けパなしにすることにした。これで行けるところまで進める。ファイルを開きすぎるといずれにせよ止まる。

 

S08 密鋳21波写し

 「下値」とあるのは、このまま最落設定になるということ。

 この21波写しの製作は、北奥で割と散見される。すなわち何十万枚かを製作しているということで、それなりの規模の鋳銭だった。出来銭の枚数規模で鋳銭体制が推定出来、関わった職人の人数が分かる。もちろん、大雑把にこれくらいと言う範囲だ。

 こういう品は、抽選権を得るための「調整用」のもの。9千円では権利が得られぬが、千円足すと規定に達する。こういう意図が案外分からぬ人が多い。

 ちなみに、オマケはさっき床で拾った。ただの焼け銭の可能性の方が高いが、輪幅が細い。丁寧に調べるほどのものでもないので、無料のオマケに。

 

S09 南部鉄銭 7枚組  (※下値は地元在住の方用)

 背盛とか仰寶など南部領の鉄銭があるが、粗雑な出来栄えなので、それがどこの銭座で作られたものかを推定出来るのは5、6割だ。

 割ときれいに抜けている品については、地金や型の特徴から銭座を推定出来るものがある。

 このためには『岩手に於ける鋳銭』を読むと分かりよいのだが、読んだ人は殆どいない。幾度も書くが、収集家の誰かが解説した雑文を読んで、分かったような顔をしている。だが、その手本とした収集家も全然読めていない。

  きちんと意味を諮り内容を吟味したのは、たぶん数人で、これはほぼ戦前の者だ。ちなみに東京には過去から現在に至るまで一人も居ないと思う。読めば分かることがまったく認識されていない。鉄銭を見て、これが栗林だとか浄法寺だとかの推定すら出来ないのに、分かったことを書いている。分類出来るのは製作の良い品だけなのだが、それにしても「何が分かっており、何が分からぬか」の線引きが出来ていない。

 その理由を発見した時にはかなり驚いた。「誰一人として『岩手に於ける鋳銭』を検討した者がいない」からだ。字面を追って都合の良い言質を拾った者はいるが批判的検討も含め精読した者がいない。たぶん、今も変わらない。

 ここで話を元に戻すと、南部銭へのアプローチには幾つかのルートがある。

 1)『岩手に於ける鋳銭』から、銭座ごとの製作手順などを推定する。勧業場ではこれを明らかにするために、銭座職人を招聘して忠実に再現してみた。ちなみに、収集家は手の上の銭しか見ぬし考えぬので、「勧業場で模造銭を作った」と考えた。愚か者は愚か者なりの考え方をする。

 2)母銭ごとに鋳所(銭座)が推定出来るものがあるので、これを鉄銭と照合する。型は同じなので、専ら製作面での話だ。

 その時、

 3)鉄絵銭が重要な鍵となる。鉄絵銭は通常の絵銭と異なり、販売目的ではなく、自分たち用に作るものだ。理由は単純で鉄銭では、枝銭でもない限り買う者がいないからということ。この結果、鉄絵銭については、それを作った銭座を特定出来る品が多い。

 それなら、鉄絵銭を鉄銭製作の手掛かりにすることが出来る、ということ。

 もちろん、文字に書いてあることがいつも正しいわけではなく、新渡戸仙岳は公文書は別として、当事者への聴取を書きとったものなので、あやふやな部分が混じる。

 だが、従来の「鉄銭は分かりません」という代物ではなく、手掛かりは幾らでもあると言える。

 

 二十年くらい前に「それならまず選り出しから始める必要がある」と考え、鉄雑銭から選り出すことにしたが、製作が揃った差し銭に絵銭が混じっていることはほぼない。 

 絵銭が出るのは、明治以後に麻紐などで括られたか、銭箱に放り込まれた雑銭からとなっている。笹竜胆虎銭はどうしても出なかった。ま、これは昔は秋田領のものだと言われていた時期もある。唐獅子も出来の悪い品を一度だけで、残念ながらこれは入札で買った品だ。

 ちなみに、「雑銭買いの銭失い」と言う言葉があるように、選り出しで拾う行為で何かしらの品を拾うには、入札やオークションで買う時の少なくとも3倍は費用が掛かる。

 

 書き洩らしたが、南部絵銭は銅銭よりも鉄銭の存在数の方が少ない。上述の通り、銅銭は売るために作成されたが、鉄絵銭は職人が自分たち用に作ったからだと思われる。

 母銭の数と砂笵サイズとの兼ね合いから、空きスペースに絵銭を入れて作ったかもしれぬし、予定数より鉄材が余った、などの事情があったかもしれぬが、これは根拠にすべき情報が得られぬと思う。

 

 南部の鉄銭はひと目見れば「最近のものかそうでないか」を見極める特徴がある。

 もちろん、これは文字には落とせない。これはそれを参考にされるからで、地方銭などの希少銭は今や中国で「発見」される(w)。銀銭が義歯製造の近くから出るのと同じ意味だ。

 鉄銭の特徴から逆算すると、「どういう母銭を使用したか」を推定出来るわけだが、銅鉄は一致しないことが多い。

 すなわち「銅銭は基本的に母銭系で、それを使って鉄絵銭を作った」という考え方は、基本的に誤りだ。銅銭は銅銭で、鉄銭は鉄銭で、各々鋳銭工程が異なる。

 

 スリープを含め機械を止めると作業が全く出来なくなる。点けっぱなしのまま病院に行く。