日刊早坂ノボル新聞

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◎病棟日誌 R060917 女は勘が働く

病棟日誌 R060917 女は勘が働く
 この日は眼科からで、眼科は時間がかかるから病院から帰るのは夕方になる。
 最近、白内障みたいな病因によるものではなく、スマホやPCの文字がほとんど見えない。ヤマ勘で打っている。
 ところが検眼表の文字はそれなりに見える。
 これって、要するに老眼ってヤツか。
 迂闊に医師に報告して、診察が増えるのは嫌なので黙っていた。
 待合室では、隣のジーサンが看護師に「眼鏡が合わなくなったから診て貰いに来た」と言っていた。十歳は年長だと思うが、当方より状況が良い。

 ベッドに行くと、この日の穿刺担当は、今年入って来た五十台のオヤジだった。
 このトシにしてキャバクラ道にいそしんでいるそうで、近々休みを取って地方の店のホステスに会いに行くそうだ。
 奥さんはいないのか。ま、看護師は割と離婚率が高い。
 せっかくなので「夜の部活」の話をした。

 「昔、会社で接待に使っている店のホステスが『バスツアーに行こう』と誘われたので行ってみた」
 朝出かけて午後に戻って来るごく普通の観光ツアーだ。
 群馬かどこかに行ったが、他にもホステスと彼氏の組み合わせがいたので、当方は「員数合わせ」だった。連れのいないホステスの見栄のため動員されたということ。
 ただひと回り観光地を見てくるだけだが、「女性とツアー」は微妙なところだった。
 「一切、証拠は残さなかったが、カミさんがどういうわけか嗅ぎ取って騒動になった」
 写真を遺さぬのはもちろん、着歴だとかも完全消去。
 だが、そういう隠蔽工作はやりすぎるとそれが証拠になる。
 オチは「この世の奥さんはこういうことにかけては勘が働くと言うが、本当だった」。
 気配を察知する能力はスゴい。
 この話を脇でユイちゃんが聞いていて笑っていた。

 ちなみに、その後は「事前に正直に報告する」ようにした。
 前日や家を出る時に「女の人と食事に行って来る」と事前報告するようにした。ま、ダンアがそうそうもてるわけもなく、せいぜい員数合わせくらいだと分かると、家人は何も言わなくなった。程度もあるが、「隠さない」というのもポイントらしい。

 

追記)三月頃にいた七十代後半以降の患者十人くらいが完全に入れ替わっていた。そもそも入口近くにいる者は半月ごとに代わる。
 改めて「ここは終着駅だ」と思った。
 がんや心臓病で死ななかった者は、最後はこの病棟に来て、最後は心肺疾患で死ぬ。
 何時か他の「誰か」に起きる話ではなく、「誰も」がそうなる。

 こういうのは当事者の立場に近くならねば全然見えて来ない。

 今月、どうしても車を買い替える必要があったが、当方の余命は三月までは確かだと思うが、体調が悪化し始めればひと突きかふた月でオサラバだ。
 「あと半年なら、中古の軽でいいな」と考え、そうした。
 病院の駐車場は狭いので、軽だと入れるのが楽だ。
 さすがに患者生活に慣れ、現実的に考えるようになった。