◎病棟日誌 R060928 神経痛ならOK
股関節の痛みが著しいが、幸か不幸か障害者の当方には週に三回の診察がある。
病棟で報告すると、座骨神経痛の疑いが最も高いそうだ。
とりあえずロキソニンを飲んで、週明けまで経過観察になった。
最も恐れているのは動脈硬化で、脚の付け根の大動脈が塞がってしまうケースだ。血行が止まると、数日で腐り始めるから、十日後には脚を切断する羽目になる。
何千人、何万人かに一人のレアケースだが、同じ病棟の患者のNさんは、その専門病院に入院し足指を切断した。その時には、周囲の患者が同じ病院で足や脚を切断した患者ばかりで、気持ちが萎えたそうだ。起きる人には起きるし、両脚を付け根から切断した人もいたそう。四十歳くらいのまだ若い人もいたそうだ。
「来週、片脚を切断する」のを想像すると、さすがに怖い。
ひと晩で両足の指が紫色に変わった実体験があるから、すぐ身近な事態でもある。いずれ足を切るのは、この病棟では普通に起きる未来予想図だ。
「座骨神経痛ならラッキーだわ。痛いだけで死なぬし、脚も切られない」
とりあえず来週までは。ただ痛いだけ。
もちろん、現実にはヒーヒー呻くくらいの痛みがある。
そう言えば、若いころに股関節を亜脱臼したのに、病院にもいかずに自然治癒を待った。二年くらいで痛みが無くなったが、数十年経って忘れた頃になり、気温の低い日や雨の日に突然痛むようになった。理由なく痛むので首を捻るが、昔の古傷と同じ位置になっている。
これは喫煙と同じ。若い頃に煙草を吸っていると、その後数十年は何ともないが、高齢期になると、突然、肺に異常が現れ始める。
収縮したり機能不全になるのだが、肺の中が黒くなっている。
原因を辿ると、半世紀近く前に煙草を吸っていたことが原因らしい。これには期間の長さには関係なく、数か月程度吸っていただけのこともあるそうだ。
「すぐには症状が現れない」とどうしても認識出来ず、たかを括ってしまう。だが、症状が出た時には、もはや打つ手が無くなっている。
ま、こういうのは病気だけでなく、人間関係でも同じだ。
夫婦であることを当たり前だと思い、相手の心情を無視していると、目には見えぬ楔が相手との間に打ち込まれる。
気が付いた時には、それまでの伴侶が「もはや自分にとって必要のないひと」になっていたりする。妻(または夫)は結婚によって手に入れた自分の持ち物ではないが、殆どがそれと同じように見なす。
難しいのは、同時進行的には、今起きている事態を認識出来ぬことだ。水流を堰き止める水防壁と同じで、増水し水嵩が増しても、壁の外側ではそれと分からない。いよいよ増水し、流れが壁を乗り越えたり、壁が壊れたりした時にそれと分かるが、その時には被害を食い止める術はない。
なんでもなく見える時から、時々観に行き点検することと、様子を確かめる気配りが大切だ。
股関節は痛いわ、目は見えぬわ、四十苦五十苦の日々だが、それなりに学ぶことも多い。