◎病棟日誌 R061026 もう浮気はしません(ソースかつ丼の話)
昨日、神社に行った折に、参拝を終えて帰ろうと車に乗った。すると、急激に肩が痛み出し、それが呻くほどに達した。
「これじゃあ、俺の肩に乗っているのは80キロのババアだわ」
もう容認できんな。
「おい。いい加減にしろ。自分を認知し理解して欲しいからと、生きている者を苦しめたって何にもならない。逆に追い払われるだけだぞ。相手に分かるように言葉で言えよな」
ま、無理な話だ。口を持っていないものな。
ところが、叱りつけた瞬間、肩が軽くなった。
「ありゃ。どういうこと?」
「80キロの女」は、ただの想定だ。そもそも直感や霊感は想像や妄想に過ぎない。それを弁えた上で、「もしこれだったら」と仮定して振舞っているだけだ。
こういうのがスパンと壺に嵌り、現実と関連性が生じたなら、それを口にした当人のほうが驚くわ。
あの世について考究し、ブログにも書き散らすが、もっともそれを疑っているのは、この私だ。
疑っているから確かめようとしているわけだ。
帰宅してから、部屋で閃きがあり、すぐに卓上電話の電源を繋いだ。
「言葉で伝えろ」と言い付けたって、先方には無理な話だが、この電話のベルでなんらかの意思の疎通は出来るかもしれん。いつも記す通り、電源は入れたが、回線は繋がっていない。
電源wの入れた途端に「プッププ」と鳴った。
左肩もさらにいっそう軽くなった。
「お前自身がコンセントを抜いて放り捨てたのにな。いざ会話が出来なくなったら、それを不満に思うのか」
いわゆる「ツンデレ」というヤツだわ。
ま、少しでも改善してくれればそれで良い。
しかし、翌朝になり、通院のために車に乗ると、また肩が痛み出した。
「イテテテ。何だよ」
昨日、叱りつけて、電話も繋いだから、納得したのかと思ったのに。
大体、50キロ前後だな。齢は30歳くらい。昨日のババアとは違うヤツだったりして。
だが、よく考えると、簡単に答えが出た。
「病気になる原因は三つある。ひとつめが純粋に身体の要因だ。有機体は成長を止めると、その瞬間に老化を始め、細胞の再生産にエラーを出し始める。二つ目が心の要因だ。内面の状態は体にも影響を与える。三つ目が魂で、この状態や他との相互行為が滞ると病気になる」
どれか一つの要因を手掛かりに、病状の改善を図ることは出来る。だが、ひとつのジャンルの改善が全快に結び付くわけではない。他を起源とする症状があるからだ。
「じゃあ、80キロのババアが肩から下りても、純粋な『※十肩』で肩が痛むってのはありそうだな」
ま、昨日の80キロよりは軽い。
生物有機体の命は有限だから、当たり前だ。誰もが必ず死に向かって行く。
昨日は多忙で夕食の支度が出来なかったので、お弁当を買うことにした。買ったのは、エビフライ弁当ととんかつ弁当、かつ丼だ。
今は外食のかつを食べぬが、どういう訳かこの日は「かつ丼」が食べたくなった。この場合は卵でとじた普通のかつ丼のことだ。食事制限がある者には「避けるべき食材」だが、ひと口食べて、あとは家人に渡せば問題はない。
お弁当を食卓に置いたが、娘が選んだののがかつ丼だった。
こりゃ残念。
結局、当人の夕食は鰺の南蛮漬けとお茶漬けになった。
翌日の今日は通院日だった。
治療を終え、食堂に行くと、この日の病院めしは「ソースかつ丼」だった。
食事制限のある者へ料理を出すのは、すごく手間が掛かる。
ベースがとんかつなのに、脂身がまったくない。もも肉など筋肉の部分を使うのだろうが、さらに下茹でまでするのかもしれん。鶏肉の場合は間違いなく下茹でしてからで、ソテーなんかはカチカチに縮こまっている。
とんかつも固いが、薄いので、まあ食べられる。
肉の摂取量が少ないので、味には敏感になっている。
「ソースかつ丼さま。大変失礼しました」
関東西部で暮らすようになりウン十年。もはやソースかつ丼はソウルフードになっている。
昨日はほんの少しだけ「普通の、卵でとじたかつ丼」を食べようと思ったが、これは間違いだった。
「もう浮気はしません」
ソースかつ丼を人間に例えるなら、こんがりと日焼けした「陸上部の女子部員」みたいな感じだわ。(違うか。)