◎病棟日誌 R061128 魔の十一月
朝、ロビーに行くと、ガラモンさんがいない。いつもここの長椅子に座って病棟の開くのを待っているのだが、今週は姿が見えない。
ここで患者同士が噂話をしているのが聞こえた。
どうやらガラモンさんは入院病棟に移ったらしい。
寒くなると血行が滞ることで、具合の悪くなる患者が出る。十一月は入院病棟や介護施設に移る者が出やすい。
春は逆の理屈で調子を崩す者が出るから、三月と十一月には空きベッドが増える。
同期の患者で今残っているのはNさん一人だけになった。次の年、その次の年に入棟した患者はもう一人もいない。
仲間が去ると、「否応なしに自分の順番が迫っている」と感じる。
病棟はガラガラ状態で、徐々に新しい患者が入って来ている。
食堂で会うが、挨拶ひとつ出来ない状態だ。先方からはしないし、こっちがしても返って来ない。
ま、治療がしんどいのと、こんな風になってしまったことで心の動揺が著しいことで、余裕がない。
だが、周りが見えぬ者は先に病棟を去る。時々、横柄なヤツが来るが、気配り心配りが出来ない者は真っ先に棺桶に行く。
ガラモンさんは大動脈が完全に塞がり、心臓を止めて動脈を取り換えた。今夏は「調子がいい」と言っていたが。
だが、秋口になり、急速に痩せていた。
やはり腎不全患者は痩せ始めたら大ピンチに陥る。
「ガラモンさんよ。星に帰ったりするなよ」
心底より願う。