日刊早坂ノボル新聞

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◎病棟日誌 R061203 オレンジ3個が致死量

病棟日誌 R061203 オレンジ3個が致死量
 先週、ガラモンさんが不在だった理由が分かった。以下はガラモンさん談。
 火曜日に通院したら、カリウム値が8mEq/Lを超えていた。除去すべく透析を始めたが、程なく血圧が60/30まで下がった。
 ガラモンさんは過去にもそのケースでバイパス手術を受けたので、すわ心臓だと、循環器専門病院に救急搬送された。
 そのまま一週間入院し、月曜に退院して火曜にはこっちの病院に戻って来た。

 カリウムの致死量は、血清カリウム値が7.0mEq/L以上になると心停止の危険性があると言われている。
 概ね6mEq/L台で、不整脈や手足のしびれ、脱力感、倦怠感、胃のむかつき(悪心)や嘔吐などの胃腸症状が現れるが、症状は人による。
 当方の場合は、自分の限界値に接近してみたが、6.5mEq/Lくらいで不整脈が起きた。不整脈と言うよりその先の心房細動と言った方がよいかもしれん。

 ガラモンさんの場合、これまでカリウム値が6mEq/Lを超えたことが無く、どれくらいが限界かを知らなかった。患者の方では血中濃度を食べ物の量に結び付ける必要があるが、これはなかなか難しい。当方は自分で実験しているが、ひとつ間違えると心停止の危険性がある。
 ガラモンさんは知人よりオレンジを貰ったそうで、その貰い物をテーブルの上に置いていたら、何となく手が伸びて2個食べてしまった。それだけならまだ良かったが、翌日になり、またもう一個食べたそうだ。それでカリウム値が8mEq/Lを超えた。
 トマト、バナナ、西瓜は「カリウム三羽烏」だが、柑橘類も高い。

 「肝腎要」とは肝(心臓)と腎臓が重要だと言う意味で、両者は深く関係している。ところが、双方のジャンルにまたがる症状については、うまく診断の付かないことがあるらしい。
 ちなみにネット辞書には「肝臓と心(腎)臓が大切」だと書いてあるが、これは誤りだ。江戸期以前には「肝」は心臓の意味だった。鬼が「ひとの肝を喰らう」のは心臓を取って食ったということ。ネット辞書はやたら間違いが多い。

 腎臓医の方では、心臓を疑い循環器科に送ったが、循環器科では「心臓に水が溜まっているのが原因」と判断し、通常よりも2キロ多い除水をしようとしたそうだ。
 実際には高カリウム症なので、透析によってカリウム値を落とせば回復するが、除水のし過ぎで血圧が下がり、起き上がれなくなったそうだ。 
 各々の担当医が、互いに相手の領域の症状だと見なしていたわけだ。ここは医療情報が現状で各病院ごとに保管されることが原因で、循環器の病院で血液検査をした時には、カリウム値が下がっているから、医師はそれが原因だと思えない。
 こういう具体例を見ると、医療情報の共有が絶対に必要で、そのためにはマイナカードと保険証の一体化が不可避だということだ。今は各々の病院に行く度に、その都度検査をやり直しているが、情報共有がなされれば、他病院での検査値を閲覧出来るから、判断材料が増える。無駄に検査をしなくともよいから、医療費の削減に繋がる。
 マイナ保険証は不可避で早急に進めるべきだが、反対する者がいまだにいる。一体何を持って反対するのかが理解出来ないが、大体の反対論者はパヨなので、「ただ反対しているだけ」だと思う。手続きの面倒臭さや、不手際などはやりながら改善して行けばよい。
 ま、病院側では診療行為としての点数が減るから、売り上げは減る。だが、当方は3割は医療費を削減できると思う。

 さて、以上は腎不全患者の世界の話だ。
 腎臓機能が正常な者には関係のない話で、オレンジ3個で死ぬことは無い。だが、一時的に腎臓機能が低下した時には、腎不全患者と同じことが起きる。
 この「一時的に腎不全が起きる」のは、過度の運動をするなど内臓に負担がかかった時のことだ。
 高校や大学の運動部などで、練習をやり過ぎると、急性腎不全になりかかるのだが、どこかが痛いわけではないから気付き難い。
 そういう時、ジュースを飲み過ぎると、高カリウム症になるかもしれん。昔は体育会系の若者が突然死するケースが時々あり、「ポックリ病」と呼ばれていたが、この中には高カリウム症が混じっていると思われる。
 カリウムの致死量は血清カリウム値が7.0mEq/L以上で、これにはオレンジ3個、すなわちコップ2杯のジュースで到達する。

 「姿が見えんから、俺はまた死んだかと思ったよ」と言うと、ガラモンさんは笑っていた。
 だが、実際に紙一重だった。
 これで死んだら、「死因はオレンジ3個」になってしまう。
 笑えない。

 ガラモンさんは二度三度と死線を踏んでいるが、その都度線の内側に戻って来る。亡くなる者は多く一発で線を越えるが、戻る者はいつもしぶとい。

 普段より除水を2キロ多くされれば、それが死因になっても不思議ではなかった。
 先週、当方はガラモンさんに江刺リンゴを贈呈しようと思っていたが、あげられずに良かった。オレンジ3個に加えさらにリンゴまで食べたら、間違いなく終わっていた。

 

追記)心臓の話をしていて気付いたが、当方の心臓の機能は著しく改善されている。七年くらい前の当方は、平地を三十㍍歩くごとに立ち止まっていたし、三年前には心肺症状。不整脈や心房細動は日常的に起きていた。それが今年はない。
 腎臓が治ることは無く、手足の劣化も進んでいるが、心臓だけはこの十数年で最も良い状態だと思う。
 どこから変わり始めたかを探っていくと、やはり一月で、要するに座敷童を撮影した月からのことになる。「マジか」と思うほど一致しているから、本当にスゴい。