◎夢の話 第1155夜 「誰もいない街」
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◎夢の話 第1155夜 「誰もいない街」
12月22日の午前四時に観た夢です。
居間の床で、寝袋に包まって寝ていた。睡眠から半覚醒状態にまで戻っており、周囲の状況が何となく分かる。
すると、不意に左の肩の上に重さを覚えた。
人の頭だ。
続いて、横腹や腰のあたりに誰かがのしかかって来るのを感じる。といっても重くはない。
42キロくらいの女性のよう。細身だ。
若い女性の使う化粧品の匂いが鼻をくすぐる。
その女性が俺の耳元に口を寄せると、「助けて」と言った。
ここで気が付く。
「最近、俺の後ろをついて来たのはコイツだったか」
いつも左腕が痺れているのは、この女が掴んでいるからだわ。
こないだまでは、2メートル後ろを歩いていたが、今は間近に寄り添っているわけだ。
「お前は八幡さまで俺にしがみ付いたヤツだな。離れたと思っていたが、ずっと傍に居たのか」
頭が間近にあるので、女の思考が俺の方に流れ込んで来る。
死んだ後、女が我に返ると、誰もいない街の中に立っていた。
よく見知った街の景色だが、人は誰もいない。
ずっと夜中で、街灯も少なく、街中が暗い。
人を探して街をうろつくが、どこにも人はいない。
時々、話し声のような音が聞こえるが、姿は見えない。
そんな時に当方の存在を感じ取り、後をついて来た、
ここで女の方に向き直ろうかと思ったが、そこで止めた。
間違いなく幽霊で、幽霊は執着心の塊なうえにそれが単直に表情に出るから、どれもこれも気色の悪い顔をしている。
俺は顔を背けたまま答えた。
「そりゃ君がもう死んでいるからさ。自我を解放してしまえば人生をリセットできるのに、そうしないで幽界の中に留まっている。君が今いる世界は君自身のイメージで出来ている。そこは君が創り出した街なんだよ」
この女は死んでトンネルを出ると、峠道を越えて、自身のかつての記憶を再構成しその街を作った。
現実とほとんど変わらぬが、しかし、あくまで心象だ。
同じような者(幽霊)が他にも沢山いるが、各々が各々の創り出した世界を見ているから、すぐ傍に別の者がいることに気付かない。
「俺のことが見えるのは、俺が一度死んだことがあるからで、俺がそっちとこの世に跨っているから俺のことが見えるんだよ」
正確には「見ている」わけではなく、感じ取っている。死ねば視覚を失うので、外界は総て心象だ。俺の心の波を感じ取って共鳴している。それが幽界での「見える」という意味だ。
「ここで私は一人ぼっちなの。どうか助けて下さい」
ぎゅうっと肩が掴まれる。
溺れる女は、相手がオヤジジイでもしがみ付く。
「死にたくなくて、生きることに執着したままだと、そこからは出られない。まずはかつての自分の家に行ってみろ。親や兄妹は今も君のことを想い泣いている。必ず共感するから、その家族の姿が見える筈だ。そこで執着を捨てれば、その街の呪縛から解放される」
とりあえず、俺の肩から手を放してくれんかな。
「別に、気が済むまで近くにいても構わんが、2㍍以上離れていろよな。掴まれていると重いし痛むから、刀で切らなくちゃならない。切られれば幽霊でも痛いからね」
優しく諭すが、やっぱり幽霊は幽霊で、思考能力がない。
まだ今後も、時々はより憑いてくるのだろう。
肩が軽くなり、ここで完全に覚醒。
ところで、先日、家人の部屋に行き、癒し水を供えた。
「あまり女房にちょっかいを出さんでくれ。あれはポンコツだが、俺には過ぎた女房だ。取り憑きたいなら俺に憑け。俺は慣れているからな」
そのまま病院に行ったら、右足の先が破れて血が出ていた。
もちろん、何かに足指をぶつけたりはしていない。
その後、ロッカーに入れていた車の鍵が、どうやっても見つからぬので、看護師を交えひと騒動になった。
その鍵が近づいてもいない長椅子の脇に落ちていたので、「俺の方に来て盛んに自己主張をしているわけだ」と気付いた。
今朝抱き付いていたのはこの子だった。
若くて細くてオヤジ好みだが、幽霊じゃあな。
しばらく前に街灯の下で自分の影がひとつ二つ余計に出来たが、この子だったようだ。本来は可愛らしい顔つきなのに、顔色が紫色だから気色悪いこと限りない。
死んだ後にどうすべきかという心の準備をまったくせずに、この世に執着を遺して死ぬと、この子と同じように「誰もいない街」に行く。自分に似た性質の者だけを認識出来るので、同じような者が寄り集まる。