日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎アケビの話

アケビの話
 数年前に、庭にアケビの苗を植えた。
 単純にノスタルジアからで、フェンスを緑で覆い、殆ど手をかけず放置しても、秋にはいくつか実を採取できる。
 日当たりのよい南側の一面は既にブドウを植えてあるから、東側の一面をアケビに充てた。
 春に植えたが、フェンスを伝い、あっという間に二十㍍がアケビの葉で覆われた。そのまま隣家にも侵入しそうな勢いだ。
 家人が「手間がかかる」と怒り、アケビをバッサリ切って、株を五つくらいの鉢に植え替えた。
 ま、秋に実を食ってみたが、土壌との兼ね合いがあるらしく、少し苦みがあり美味しくないから、家人に任せた。

 アケビは面白い植物で、縋りつく樹やフェンスがあると、物凄い勢いで成長するのに、鉢に一本だけ植えると、まったく育たない。それから三年は経ったと思うが、背丈が五十センチのままだ。

 半年くらい前に秩父に行ったが、そこで地元産品の展示を見た。その中にアケビ篭が置いてあった。
 展示品なので値札が付いていない。
 「これは幾らくらいするのかな」と家人。
 「ピンキリだが、アケビ篭の上質のなら三万くらいからだな」
 「ええええ」
 外見の似たような篭は東南アジアでも売られてているが、千円しない。何かの植物の蔓を使っている。
 「アケビ篭は百年使えるんだよ。だから高い。蔓の先だけを使った最高級品なら、篭一つ五万円だね。ブランド品並み」

 これで家人の頭で何か閃いたらしい。
 庭のアケビが「お宝」に見え始めた。
 「うちにはフェンスが四面あるから、そこでアケビを栽培する」
 隣家に飛び出さぬように、フェンスに張るネットを買って来た。
 家人の趣味は手工芸で、暇があると造花を作っている。
 今度はアケビ細工を始めるらしい。
 「とりあえず技術を学ぶ必要があるから、作っているところに連れてって」

 ということで、秩父まで工場を見に行くことになった。
 追って、秋田とか青森にも行くそうだ。
 ダンナは運転だけなら出来るので、運転手として帯同する予定。歩けぬので車からは下りない。
 「葡萄篭はもっと高いんだよ」と思うが、今は言わずに置いた。そんなことを教えたら、壁に櫓を組んで、アケビと葡萄を育てることになりかねない。

 ダンナの方は、子どもの頃によく食べた「桑の実」を食べたいので、苗木を探しているが、今は桑は栽培されないからなかなか見つけられない。桑の実を食べて、唇を紫色にしてニッと笑いたい。