日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎夢の話R070630「イチモツ」その5

◎夢の話R070630「イチモツ」その5

 それから二週間後に、俺は奥村医師に会った。

 場所は市内の喫茶店だ。病院の医師看護師全員が俺のことを知ってしまったし、中には変化のあった者もいたから、俺が姿を現せば大騒ぎになる。 それを避けるために、奥村医師はこの場を選んだのだ。

 「では先日の実験の結果をお伝えしますね」

 「ええ。どうでした?」

 「病院の関係者十八人が試させて頂きました。男性が六人と女性が十二人です。男性については、格別変化が生じた人はいませんでした。女性の方は色々な感覚を感じた人が八人います」

 「十二人のうち八人ですか。これはどう考えればよいでしょう。多いのか、あるいは少ないの?」

 「女性被験者の六割六分ですから、かなり多いと言えます。で、そのうち体にさわさわと小波が立ったのが三名。体調が上向いたのが三名、持病が改善されたのが二名でした」

 「二人は良くなったと?」

 「ええ。胃潰瘍子宮筋腫が著しく良くなってますね」

 当たり前だが、人によって反応は様々らしい。

 「出ない人は出ないが、出る人はパッと出るって感じですかね」

 「最初のさわさわ感を感じられたかどうかが重要なようで、そこで何も出ない人は先には進めないのではないかと思います。その先の進み方はその人なりですが、ゆっくりな者、反応の早い者の違いこそあれ、改善されるのは疑いないです。私は上川さんのパワーは疑いなく存在すると思います。私自身が経験しましたが、数日で症状が消えました。先ほどお伝えした子宮筋腫の者は当院の看護師ですが、腫瘍が完全消失しました」

 良かった。それなら郷里の母の病状を改善出来るかもしれない。

 「私、上川さんがおっしゃっていた神河神社について調べてみました。上川さんのご先祖が作られた神社なそうですが、元は神の河、サンズイの方だったのですね。維新の後、名字に神の文字を入れるのは畏れ多いと今の漢字に改められた。室町時代に移り住んだそうですが、この地での子孫繁栄を祈念するため金勢神社を建立なさった。私はこの神さまが、所縁のある末裔に贈り物をくれたのだと思います。今の状況とピッタリ合ってますね」

 「いやいや流石にでかすぎますね。これじゃあ普通の社会生活は望めない。在宅勤務が多い仕種とはいえ、打ち合わせに行くのにも苦労します」

 「こういうことが起きたのは、神さまの思し召しですよ。いっそのこと、これを暮らしの柱になさってはどうですか」

 「でも、全員が治癒するわけじゃないですよ」

 「弁護士だって会計士だって自分の対応出来る範囲で顧客に接してますね。カウンセラーや占い師は話を聞き助言するだけで報酬を得ます。上川さんは現実に病人を治癒する力があります。私はこれは福音だと思います」

 「何だか、信者から金を騙しとるイカサマ宗教の仲間になる気分がします」

 「でも、命を救われる人も確実に出ます。ビジネスではありませんから、高額な謝礼は不要ですが、労力と時間を使いますから対価は必要です。一方、何も変化のない人もいますから間口を広く、通行料を安価にする必要がありますが、逆に冷やかしが来て、本当に必要な人を阻害することになるかもしれません。ここはよく考える必要があります」

 いやはや、奥村医師は既にかなり先のことまで見据えていた。

 自身の病気が治癒に向かったことが、よほど衝撃だったらしい。

 

 ここで唐突に携帯のベルが鳴った。

 電話に出ると、掛けてきたのはサクラさんだった。

 俺は十日に一度くらいソープに通ったが、いつの間にか、サクラさんと友だちになり、番号を交換していた。

 「今どこなの?」

 「中央通りの喫茶店

 「すぐ傍だね。話したいことがあるんだけど」

 店の中に目を遣り、奥村医師の姿を見て、パッと閃いた。

 すぐに店内に戻る。

 「先生。癌が治ったっていう人から連絡が来たけど、会って話を聞いてみる?」

 「ここに来るの?もちろんよ」

 俺はすぐにサクラさんに折り返した。

 「コマチっていう喫茶店にいるから。わかる?」

 「知ってる。十五分くらいかな」

 「了解」

 

 きっちり十五分後にサクラさんが現れた。

 俺はその姿を見て、思わず声を上げた。

 「おいおい、どうしちゃったんだよ」

 店の外で会うのは初めてだったが、今のサクラさんはまるで別人だった。

 元々体型はきれいだが、店の中ではオバサンじみて見えたのに、目の前の女性はそれより一回り以上若かった。

 「何だか気分がいいのよね。体調も良くて、お化粧がきれいに乗る」

 「いやいや、化粧の問題じゃないな。明らかに若くなってる。三十歳くらいにしか見えないや」

 ここで奥村医師が口を挟んだ。

 「おいくつなんですか?」

 俺が「なんとアラ四十」と答えようとすると、その声に重ねるように、サクラさんが「四十四歳」と答えた。

 俺と奥村医師が同時に立ち上がって、「えええええ」と答える。

 「信じられない。私より六七歳は若く見えるのに」

 サクラさんと奥村医師が俺の股間に視線を送った後、同時に俺の顔を見た。

 「スゴいご利益ですね。でも、これは絶対に口外してはダメですね。大騒ぎになる」

 三人が席に着いたところで、サクラさんが話し出す。

 「私はステージⅢからⅣの癌患者でした。でも、ケンジさんに会って、病巣を全部消して貰えた。もう人生を諦めていたのに、新しい未来が開かれました」

 「私も膠原病の持病があり、将来を悲観していたのですが、ぐいぐいよくなってます」

 二人が顔を見合わせて頷く。

 

 「私はケンジさんにどうやってお礼をしようかと考えたのですが、身の回りのお世話をさせて頂こうと思っています。お掃除や洗濯、料理がかなり出来る方ですから。どこかお惣菜屋さんにでも勤めて、時々訪問させて下さい」

 「店は?」

 「もう辞めました。親の借金を返すための仕事でしたが、もう返しましたし、蓄えも出来ました。この先は自分の人生を歩みます」

 「結婚を申し込んでくれた人は?」

 「お断りしました。でも、ケンジさんの彼女にしてくれなんていう話ではないですよ。人生を救ってくれたお礼がしたいだけです。それと、傍にいるだけで明るい気持ちになれるし、実際、こんな風に若く健康になってます」

 ここに奥村医師が割り込む。

 「私も主治医として傍に置いて貰えませんか。たぶん、上川さんは他の人を治癒することは出来ても、ご自身には免疫のようなもんが働いて、自然治癒機能が働かないと思いますね。専門の医師が必要です」 

 サクラさんがオバサンから娘に変貌したのを確認し、奥村医師の心境が揺さぶられたらしい。その気配をサクラさんが感じとり、すかさず応戦した。

 「ケンジさんは若者で様々な欲望があります。ですが、それに応えられる女性は滅多にいません。私は正式な奥さんが出来るまで、お務めさせて頂きます」

 その言葉を聞き、奥村医師は表情を固く強張らせた。

 

 俺はその様子を見て、「こりゃ面倒なことになったな」と痛感した。

 俺のイチモツに触れれば病気が治り、セックスをすれば若返る。

 そんなことが世間に知れれば、必然的に俺の夜の争奪戦が起きてしまうのだ。

 だが神さまはよく考えておいでだった。

 今の俺とセックスが可能なのは、サクラさんみたいなごく少数の女性に限られるからだ。

 ここで覚醒。(終了)

 夢はここまでだが、続きが書けそうな展開だ。