◎病棟日誌 R070813「スルーする」
◎病棟日誌 R070813「スルーする」
新しく入った二十台の看護師(男)は、なんだか印象が悪い。
卒が無さそうでいて、実は手を抜いているのが何となく分かる。というかまだ未熟だということだ。
オバサン看護師が相次いで辞めてから、若手に注意する者がいなくなり、ベテランは師長と五十台のタマちゃんだけ。
つくづく「口さがないオバサンの大切さ」が分かった。オバサンならではで細かいことに良く気付く。
患者の方は、「コイツはここが足りないな」と思っても、口には出さない。ヘタクソで、無用な痛みを与える場合だけ。
生き残ることで精一杯なのに、医療現場の切り盛りまでかかわってはいられない。
という話とは別に、この若手(名前は知らない)は「気持ち悪い」ので、なるべく敬遠したくなる。医療技術云々の話ではなく、とにかく居心地が悪い。
前回、その理由が分かってきたが、背後に女の気配がする。
後ろに立って、何やら喚き立てる女がいるわけなのだった。
その時にも書いたかもしれんが、あまりに煩いので、ついに本人に訊いてみた。
「過去・現在で女性とトラブルを起こしたことがあるか?」
「それまりにくらいですが、もちろん、あります」
「なら、将来、必ず起きて騒動になるから、その時にはとにかく自制すること。何年か後に揉めたら、俺のこの言葉を思い出すとよい。怒りに任せて行動したらダメだ」
「どうしてそう思うんですか?」
「後ろにいる人が叫んでいるからだよ」
ああ、、これで当方も「気色悪いヤツ」になった。
ならもういいや。
「子どもは二人か?」
「まだ結婚していません」
「なら女の子が二人出来る。男の子を作るチャンスもあるが三人目だな」
たぶん、出来ない。何故なら娘二人で来たところで離婚するからだ。
三十台の後半に、女性とトラブルになり、紛糾する。
それを今のうちから画策している奴が後ろにいて、煩いくらい叫んでいる。
その時、その女性か奥さんを傷つける可能性が高い。
心中で、「娘二人を泣かすなよ」と思った。
ま、それ以前に「殺すなよ」だ。
もちろん、そんなことは口に出しては言わない。
こういうのは、他人から見ればただの想像であり妄想だ。
当方は占い師でも霊能者でもない。
滅多に口にすることはないが、今は自分の対策で手一杯だから、気を配る余裕はない。
何せ、残り時間はあと一か月だ。
この看護士が穿刺の担当になったのは、この日が二度目だったが、殆ど口を利かなかった。
で。この時に「不快感の要因」がはっきりした。
左肩の後ろに、女が掴まっていて、あれこれ囁いたり、時折叫んだりしていた。
多情だが、独占欲の強い女で、死んだ後もこうやって男に取り憑いている。
理性を保ち、誠実に振舞っていれば、悪影響は少ない。囁き声に負けなければ問題はない。
誰の身にも同じことが起き、幽霊は寄って来るし、心情に関ろうとして来る。
気分転換をし、自分を見失わなければ影響は少ない。
もちろん、平常心を保てる状態であれば、という条件付きだ。
不快に感じるのは、その女が当方を意識した時に、「こっちに乗り換えて来るかもしれん」と思うからだ。
このため、絶対にその看護師と視線を合わせぬし、肩の後ろにも目を向けないようにしている。
前回は不用意に口にしてしまったが、「こんなのはスルーする外はない」と思った。
理解出来ぬ者に何かを助言しようとしても、相手には受け入れられない。
もちろん、当方の直観が間違っていることだってあり得る。
自分自身のことなら外れたことはないが、他人のことまでは分からない。分かるふりをするほど傲慢でもない。
少し重荷になるのは、十何年か後に「彼女」か「妻」もしくは「妻子」を傷付ける情景が絶えず流れ込むことだ。
曲がりなりにも聞く耳が欲しいなら、「出して見せる」他、手立てはない。
追記)ちょうどこの時の感じと同じに見える。
この女は裸で、多情多淫な者だ。色欲を吹き込んで来る。
この手の者が取り憑いていると、他の人の眼から見ると、セクシーに見える効果があり、男性なら女性との交際機会が増える。もちろん、罠だ。