日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎夢の話R070830「父来る」

夢の話R070830「父来る」
 三十日の午前三時に観た夢です。

 いまだ階段を上がれぬ状態が続いているので、居間で寝起きしている。
 ま、震災以後は「もしも」に備えて居間にいることが多かったが、床でごろ寝だった。今は布団と竹茣蓙を敷いて床に寝る。歩けぬのだから致し方なし。
 この日もそんな風に居間で眠っていた。

 「ごとごと」という足音で瞼を開くと、台所から父が出て来るところだった。
 「あ、親父。来てたのか。随分遅くなったな」
 父が亡くなってから三年目だが、これまでは父の気配がまったく感じられなかった。
 「ようやく目が覚めたのか」
 父はコロナに感染して亡くなった。病死や事故死の場合は、没後しばらくの間、暗闇の中で眠っていることが多い。
 事件死の場合は十数年に及ぶ場合もある。
 十数年も経つと、遺族の意識も徐々に「思い出」だけになっているから、十分にご供養して貰えないこともある。この場合のご供養とは対話のことだ。
 亡くなって間もない場合は生きている時と同じように仏壇の故人に声を掛けるが、時間が経つとそれをしなくなる。個人が故人となり、じきに「仏さま」になるためだ。

 「目を覚ますのが遅かったな」
 「まあな」
 このところ、毎日、父と一緒に出掛けた時を思い出していたから、それに触発されたのかもしれん。
 「疲れたからもう寝る」と父が言う。
 「じゃあ、布団を敷くから」と起き上がろうとすると、父がそれを制止した。
 「お前はそのまま寝てろ。自分でやるから」
 父は既に自分の枕を抱えていた。

 そのまま父は居間のドアを開けて廊下に出て行った。
 背中を見送り、そこで考えた。
 「いつも父母たちには今の息子の部屋で寝て貰っていた。二階で寝られるところは女房の部屋くらいだが」
 父が入って行ったら、家人はさぞ驚くだろ。
 「だがま、幽霊なんだから、布団は不要だな。たぶん、親父の行く先は俺の部屋だ。俺の部屋には、お袋の遺品やお稚児さまの写真なんかがあるから」
 あの世に最も近いのが、私の部屋だった。

 父との交流が再開されるなら、また従前の通り、あれやこれやと昔話が出来るかもしれん。
 釣りや商売、父の子どもの頃の話など、いつも私は聞き役だった。今度は語る方だな。
 ここでパッと気付く。
 「マジで親父は俺を迎えに来たのかもしれん」
 何せ現状では、私の余命はあと二週間ちょっとだ。
 すぐに居間の入り口に声を掛けた。
 「親父。親父は俺を連れに来たのか?」
 ガラス戸に父の背中が映っていたが、父は答えず姿を消した。
 ここで覚醒。

 やはり得体のしれぬオバさんやら、着物を着た見知らぬ女とは違い、父は親族なので、幽霊特有の薄気味悪さが無い。