日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

九戸戦始末記 北斗英雄伝 其の弐 残雪の章

[この章のあらすじ]
山館を出発した疾風と小次郎は、早坂峠を越え、畝村(現在の国境峠付近)に差し掛かる。この地は旅人を襲って金品を奪う盗賊一味がいるところで、疾風たちも襲われそうになるが、疾風があっさりと切り捨てる。
盗賊がそりに載せていた瀕死の女人(葛西衆の一族)に頼まれ、疾風、小次郎はその地で出会った三好平八と共に、葛西の子どもを捜しに向かう。首尾よく男児ひとりを見つけ出したが、狼の一群に囲まれてしまうのだった・・・。

[この章の登場人物]
○玉山小次郎(この章の語り部:17歳) :日戸内膳配下の玉山重光(後の玉山常陸)の甥。内膳の密命により、疾風と共に三戸に向かう。

○疾風(厨川五右衛門:30歳くらい) :姫神山の麓に住む弓の名手。常に自らの武術を研ぎ澄ますことを考えている。

○三好平八(45歳) :三好康長が下賎の女に産ませたとされる中年の侍。織田信長明智光秀、木村吉清各家に厨番として仕える。葛西・大崎で木村家中が狼藉を働くのに嫌気が差し、一揆に乗じて落ち延びてくる。「武術の腕はないが、料理の腕は確か」であるらしい。  

○市之助(葛西五郎:8歳) :葛西衆の縁者で、戦乱を避け北に落ちる途中、母を盗賊に殺されてしまう。
姉も一緒にいたが、盗賊の別の一派に連れ去られる。

○赤平熊三(50歳?) : 禿でひげ面の盗賊の首領の弟。自らの名乗りを上げる前に、疾風に退治される。

○黒狼(?) : 疾風の宿敵。岩泉周辺を縄張りとする狼の親玉で、過去に疾風と戦ったことがある。顔に傷があるのはその名残。実はレタルの弟でもある。

[ミニ解説]
天正十八年秋に、秀吉の奥州仕置きにより、葛西・大崎は改易となり、木村吉清が三十万石の領主としてやってきます。この木村の主要な配下は新規召抱えの浪人が中心で、当地の人々に圧政を敷き、このため11月には大掛かりな一揆が起きることになりました。
葛西衆、大崎衆は総勢4万6千人で、手勢300人の木村吉清はそれまでの居城を捨て、佐沼城に立てこもりました。
三好平八はこの時に木村家を脱し、別の仕え先を探しながら、各地を放浪していました。
一方、葛西衆の一族の市之助母子も一揆の戦乱を避け、縁者(まだ名は出てこない)を頼りとすべく旅立ちますが、途中で盗賊に襲われ、母親と従者が死に、姉(9歳)は連れ去られてしまいます。
疾風、小次郎はちょうど、その直後にその場所に到達しました。

疾風、小次郎は冬の早坂峠を馬で越えるという離れ業をやってのけますが、これは北上山系の隅々までを知り尽くした疾風ならでは。

次の「其の参 悪鬼の章」では、豊臣秀吉が手指が6本ずつ、瞳が左右2つずつの怪物として登場します。
なお、「秀吉の指が6本」は前田利家が書状に書いたとおりほぼ事実で、「瞳が2つずつ」も口承の伝説としては東北各地で散見されるものです(全くの作り話ではない)。