日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第101夜 腕に生えたサクランボの木

左腕に、イボのような、あるいはコブのような小さな突起ができていた。
「あれ。へんなものができている。痛くもかゆくもないから○○コロリで取っちゃおうか」
夕食の前に、そう妻に言うと、妻は「今はその○○コロリは売ってないわよ」と答える。

その夜はそのまま寝ることにして、床に入った。
朝になり、起きようとすると、体が動かない。
それもそのはずで、左腕のコブがバケツ大まで大きくなっていたのだ。
「何だよ。これ」
そのコブは見ているうちにも、どんどん大きくなっていく。
仕事を休みそのまま寝ていたが、昼頃にはバケツの太さのまま長く伸びて、先がいくつもにも分かれていた。
色は黒く、固く変化しており、まるで木のよう。
「これってサクランボの木じゃん」
当家の庭には桜桃の木があるが、それとまったく同じ幹に変じていたのだ。

腕に生えたサクランボの木は、枝が7本に分かれた大きな樹に育ち、午後3時頃に花を咲かせた。
それからさらに何時間か経ち、夕方になる頃にはひとつの幹に1つずつ、計7個の大きなサクランボの実をつけるようになった。

「まだ青いよね」
妻や子どもたちが、寝室に見に来ては口々に言い合っている。

夜半になると、サクランボはそれぞれスイカ大のサイズまで大きくなった。
成長はそこで止まり、今度は形が少しずつ変化していく。
2日目の朝になると、サクランボの樹の枝には、7つの鳥かごがぶら下がるようになっていた。

「お父さん。今日は学校を休んでこれを見ていてもいいかな?」
中学生の次女が言う。
「だめだよ。お前の年頃では、とにかく課せられた勉強なり手伝いなりをこなす習慣をつけることが一番大事だぞ」
床の中から説教をするが、なにせ、腕に桜桃の樹を生やした姿なので、説得力がまるでない。
渋る子どもたちを学校に行かせたが、ひとまず妻には仕事を休ませ、面倒を見てもらうことにした。

樹から伸びた7つの枝は、部屋いっぱいに広がり、うち3本は東西の窓から外に突き出ている。
枝にはひとつずつ、大きな鳥かごがぶらさがっている。
その頃には、鳥かごの中に小鳥が1羽ずつ入り、かしましく声を立てるようになっていた。
「ウグイスかな」
「春らしいけれど、これだけいると煩いくらいだわね」
妻も閉口気味。

昼食を妻に食べさせてもらっていると、突然、腕から樹が外れ、倒れた。
天井や壁の何箇所かをメリメリと枝が突き破っている。
気がついてみると、鳥かごもごしゃごしゃに部屋中に散らばっていた。
「おい。小鳥たちが大丈夫か確かめてみろよ」
妻がひとつ1つの鳥かごの中を確かめると、6羽までは無事。窓から外へ出してやる。
自然は厳しいけど、ウグイスなら外で生きていくのが当たり前だろう。無論、それが幸せかどうかはわからないけれど。

「あと1羽はどうした?」
「見つからないわよ。かごの中は空みたい」
いったい、どこへ行ったのだろう。

その時、私のシャツの腹がモゾモゾ動く。
「おお。ここにいるぞ」
Tシャツをめくってみると、中にいたのはウグイスではなく、体長が10センチくらいの「頭がクワガタ虫、胴体がコウモリ」の醜悪な生き物だった。
これって、「カブトコウモリ」ってヤツだよな。
確か、クワガタ虫の頭なのに「カブト」って名前がついている変な動物だ。
頭の角に見える2本の突起は、角ではなくそれぞれが口で、牛とかの血を吸うコウモリの仲間である。

「カアサン。こいつって危険なんじゃあなかったかな」
指の爪も長くて、こいつに触られるだけで、肌に傷がつくはず。
「子どもなのかな。どこか頼りなげだ」

姿かたちが醜いからといって、むげに殺してしまうのも可愛そう。
窓の近くまで抱いていき、そこで声を掛けた。
「お前は他人から疎まれ、外の世界では長生きできないかもしれんが、それでも自分なりに生きてみるべきだろう。放してやるから、好きに生きてみな。ただし、この家族の血は吸いに来るなよな」
そう言って、手のひらを開けると、その動物はハチドリのようにパタパタと翼を動かして、飛んでいった。

ここで覚醒。
「カブトコウモリ」は想像上の生き物ですが、いったい、何の象徴なのか。まったく想像がつきません。
夕食後、居間で眠りに落ちてしまいこの夢を見ました。目覚めてすぐに、大慌てでこれを書いてます。