日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第141夜 黒い涙

つい昨日の話です。
昼過ぎに少し横になったら、すぐに眠りに落ちました。

夢の中で我に帰ると、そこでも私は寝そべっています。
左手になにやら感触があるので、そちらに目を向けました。
1人の女性が、両手で包むように私の左手を握っていました。

誰?
記憶の底から、少しずつその女性のことが浮かび上がってきます。
ああ、○○ちゃん。
20何年か前に、仲の良かったホステスのお姉さんでした。
毎日のようにその店に飲みに行ったなあ。ほんの何ヶ月かは彼氏だったこともあります。

「○○ちゃん。どうしたの」
今は40何歳かになっているはずなのに、そこにいる姿は二十歳過ぎのままです。
女性は、何も答えず、そのまま私の手を握っています。

私が体を半分起こしても、手は握られたままです。
「○○ちゃん」
もう一度声を掛けます。
その声に応じ、女性は顔を上げます。
すると、女性の眼から、ひと筋ふた筋と涙が零れ落ちてきました。
「どうしたの?何で泣いてんの」
やはり女性は黙ったまま。

そのうちに、女性の両目から流れる涙が黒くなってきました。
頬には黒い筋ができてきます。
顎の下まで頬を伝うと、私の手の上にぽたりぽたりと、黒い涙が滴り落ちます。
「ありゃりゃ。こりゃまずい」
二人の手は真っ黒に変わってしまいました。

ここで、今が夢の中だってことに気付きます。
もう一度女性の名を呼びます。
「○○ちゃん!」
次の瞬間、女性の姿はしゅっと消えてしまいました。

どきっとして目が醒め、飛び起きます。
これは悪夢だな。

急いで着替え、外出しました。
夕方まで少し時間を潰した後、女性を知る共通の知人のところに向かいます。
挨拶をして、ひとしきり昔話をした後、「○○ちゃんがどうしてるか知ってます?」と訊いてみました。
「ああ、○○ちゃん。去年死んだらしいよ。12月にね」

夢の中で感じていた嫌な気配は、これだったのですね。
あれから後、その女性はあまり幸せではなかったような気がします。