日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

小学校の結婚式

妻は小学校の英会話講師です(すなわち外国籍)。
先日の昼休みのこと。講師室を3年生の男児3人が訪れました。
その中の1人が妻の前に歩み出て、高らかに宣言します。
「先生。先生はもうオバサンなのに独身だから可哀相だ。オレが結婚して、先生を守ってあげるよ」
妻の名字は日本人名で、すなわち日本人と結婚しているということですが、子どもたちはそれに気付いていません。妻は、その子たちが子どもなりに好意を示してくれているのだと感じ、「いいわよ。どうも有難う」と答えました。
 すると、子どもたちは「じゃあ結婚式をしなくちゃ」と、準備を始めます。
 子どもたちは最初に校庭に走り、花壇の花を摘んできます。帰って来ると、二人がモップを交差させアーチに見立て、「その下をくぐって!」と妻に言い付けました。
 妻が男の子と一緒にそのアーチをくぐると、そこで指輪の交換です。
 男の子は、紙で作った指輪を渡し、「じゃあこれからはミセスだからね」と大人のような口ぶりで言いました。
 午後の授業が始まり、男の子たちのクラスに担任の先生が来ると、「誰かが花壇の花を摘んだ。そんな悪さをするのは一体誰だ?」と尋ねました。
 「はあい」と三人が手を上げます。
 「どうしてそんなことをしたんだ?」
 「・・・」
 
 担任の先生は、職員室に帰って来ると、強情な三人の児童について話しました。
 「何度尋ねても、花を摘んだ訳を言わないんですよ」
 その日の放課後、講師室をまた三人組が訪れます。
 「担任の先生に叱られたあ」
 妻は笑って、理由を言わなかった訳を訊きます。
 「どうして、花を摘んだ理由を言わなかったの?」
 「だって、叱られる理由が2つに増えるだけだもの」
 なるほどですね。
 この三人組は、どちらかと言えば悪ガキ組で、しょっちゅう叱られているとか。日頃から「叱られ慣れ」していた訳です。
 「先生も秘密だよ」
 子どもたちとのその約束を守り、妻も何があったかを他言しませんでした。
 秘密を共有しているので、今ではすっかり子どもたちの仲間になったという話です。
 
 妻と結婚式を挙げた男の子は、毎日講師室を訪れては、自分のあげた指輪を先生がきちんと指にしているかどうか確かめるのだそうです。