日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

本当にあったマジで怖い話

先日、ある方にお会いして、怖い体験談を聞きました。
地域や細かい内容は、さすがに差し障りがありますので大幅に変えてありますが、本線は実際にあった話です。
 
20年ぶりの同窓会の後、A子さんはかつての同級生3人と一緒に路線バスに乗りました。
郊外を走る路線バスで、まだ11時前なのに最終便です。
バスも古く、座席が向かい合わせに座る旧式の車体でした。
 
4人は、高校時代の懐かしい思い出話をします。
自然に声高になり、自分たちで「これじゃあ迷惑だよね」と言い合いますが、やはり何時の間にかハイテンションになってしまいます。
バスの乗客は、A子ら4人の他に、中年の女性が1人と初老の男性が1人、それと40代の男性と30歳前後の女性のカップルがひと組です。他に運転手がいますので、そのバスに乗っていたのは、合計で9人でした。
 
A子さんは、あれこれと話をして、「これではちょっと煩すぎるかな」と周りを見回しますが、誰ひとりとしてこちらを煩そうに感じているような人はいません。
向かい側に座る中年女性や初老の男性は、顔を背けるような感じで、下を向いています。
後部座席に座るカップルは、乗客が少ないのをいいことに、男性が女性に頬ずりをし、時折キスを交わしています。
「あれま。こんなところで」
A子さんはそう思いましたが、じろじろ見るのも不躾なので、眼を逸らします。
 
「そう言えば、B君がA子のことを見てたわよ。今でもA子が好きなんじゃない?」
「やめてよ、今さら。B君だって奥さんや子どもがいるんだろうし」
A子はバツ1で、今は独身です。同窓会では、高校時代に付き合っていたB君のことをチロチロと見ていました。
かたやB君の方は、男子仲間で盛り上がっており、ベロベロに酔っていた様子です。
「今、奥さんはいないらしいよ。A子、大チャーンス!」
仲間の1人がけしかけます。
「C子だって、今は独身じゃない」
気が付いて見ると、最後に残ったのは、バツ1が2人と未婚が2人。
「だめじゃん。私たち」
「はあ」と皆で溜め息をつきます。
 
すると、運転手が後ろを振り返って、4人に目配せをしました。
運転手は、バスの前のステップを顎で示します。
「煩いって言ってるのよ」
「あんまり騒ぐなら出てけってことかしら」
「少し静かにしなくちゃね」
 
4人は、心掛けて声を落とします。
ところが、その運転手は、バス停が近付く度に、後ろを振り返って合図をします。
「何あれ」
「マジな顔つきだよね」
ここで4人は改めて周囲を見回しました。
中年女性も高齢男性も、表情を硬くしたまま、じっと座ってます。
後ろの2人は・・・、男性が女性の首元に顔を埋め、ぴったりと抱き締めたままです。
「あれ。あの2人。少しおかしくない?」
男性の視線が宙に飛んでいました。
「え?」
1人が後ろを向こうとするので、A子が留めます。
「見たらダメだよ。失礼じゃない」
 
この時、運転手が大きな声で乗客に呼びかけました。
「次の停留所は、〇〇駅へ一番近い停留所です。今夜はこの便が最後ですよ」
降りろと言わんばかりの口調です。
(今、降りろって言ってるんだわ。)
A子はここで気づきました。
「じゃあ、今日は皆わたしの所に泊まって。今夜は家で語り明かしましょ」
声高に言うと、運転手が小さく頷きました。
 
それを合図にするかのように、前の中年女性と初老の男性が立ち上がります。
仲間4人と2人の乗客は、そのバス停で降りました。
停留所に降りると、中年女性が皆に言います。
「有難う。有難う。動けなくて本当に困っていた」
初老の男性がこれに言葉を続けます。
「あの男の眼を見たか。あいつはバスに乗るなり、女の胸をアイスピックで刺していたんだ。床が血だらけだったぞ。オレが乗った時にはとっくの昔に女は死んでたんだよな」
男の視線は、あらぬ方を向いていたので、そのあまりの禍々しさに、男女2人の乗客はその場を動けずにいたのでした。
 
運転手は、バックミラーに写る男女の痴態に異常を気づいていたのですが、他の乗客に被害が及ぶのを怖れ、そのまま素知らぬ顔で運転を続けていたのでした。
後日、ニュースになった記事を読むと、男は愛人との別れ話のもつれから、まず女性の家族を殺しました。さらに女性を強引に連れて逃げる途中でバスに乗り、座るや否や女性の心臓をアイスピックで貫いたのです。
 
それから十数年もの時が経ちましたが、A子さんは、その時の男性の視線の異常さと、既に死んでいた女性の表情を忘れる事ができないのだそうです。
もっと怖いのは、その時騒ぎ立てたりしたら、自分たちも殺されていた可能性が高い事です。