日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第154夜 レックマン博士

夢の中の私は30歳台前半です。
たまたま郷里に所用ができたので、その所用のついでに実家に寄りました。
家に入ると、応接間に父と外国の方がいました。
何やら楽しそうに話をしています。
会釈をしてドアを閉め、居間の方に行きました。
 
しばらくすると、父が飲み物を取りに居間に来ました。
「お客さん?」
「ああ。あれはレックマン博士。〇〇大学の先生だよ」
「さっきはドイツ語風に聞こえたけど、いつからドイツ語がわかるようになったの?」
「オレがわかるわけないだろ。相槌を打っているだけだよ」
「なんで付き合うようになったの?」
「しばらく前に、美術品を見せてくれと訪ねて来たんだよ」
我が家は旧家で、洋館のあちこちに、曽祖父が集めた絵画や骨董品が置いてあります。
「お前も大学で講義をしてるんだから、少し話をしていけ」
「面倒くさいよ」
「そう言うな。同業者だろ」
「じゃあ、挨拶だけね」
長い廊下をもう一度応接間に戻りました。
 
「ドクトル・レックマン」
父が呼び掛けると、外を眺めていたレックマン博士が振り返りました。
「コイツは家の息子です」
父に口を向けられたので、私はドイツ語で簡単に自己紹介をしました。
レックマン博士の左の眉が少し上がります。
「ご専門は何ですか」(以下ドイツ語)
「文化社会学です」
なるほどドイツ人だ。欧州大陸流の社会学のジャンルです。
「ほう。私は歴史社会学の講座を持っていて、侍社会のことを研究しています。じゃあ19世紀のドイツで・・・」
たまたま関心のあったことを聞こうとしますが、博士が遮ります。
「ゴメン。仕事の話はしたくないんだ。今日は彫刻を見せてもらいに来たのだから」
それもそうだ。
わざわざ絵や彫刻を見るために足を運んだというのに、別のことをあれこれ訊かれたら興がそがれますね。
「こりゃ失礼。では、ごゆっくりどうぞ」
 
ちょうどその時、応接間に、執事がやってきます。
仕事上の急用ができ、父を呼びに来たのでした。
「わかった。すぐ行く」
父は執事と共に、部屋の外に出て行きます。
視線を戻すと、レックマン博士は壁際の彫刻のほうに向かっていて、熱心に見ていました。
「博士。お好きなだけ見て下さいね」
私も部屋を出て、居間に戻りました。
 
15分ほど経つと、メイドの1人が小走りで駆け寄ってきました。
「〇〇さん。お客様が変です」
「どうしたの?」
「お茶を運んだら、大きな風呂敷包みを抱えて、お帰りになるところでした」
風呂敷包みほど、ドイツの学者に似つかわしくないものはありません。
「父は知ってるの?」
「まだ執務室です」
「レックマン博士は何か言ってた?」
「ちょっと借りていく、と」
やられた。アイツは博士なんかじゃないぞ。泥棒じゃん。
道理で研究の話を避けるわけだ。
「そりゃ泥棒だ。骨董品泥棒だよ」
慌てて玄関に出て、左右を見ると、駐車場に向かうベックマン博士の背中が見えました。
「警察を呼んで。それとゲートを閉めて外に出られないようにして」
実家の玄関の外は、50メートル四方はある広い中庭です。
駐車場はその片隅にあったので、博士は80キロ近くの彫像を抱え、車までえっちらおっちら歩いて行こうとしていたのでした。
 
泥棒博士は、まさか同業者(学会のほう)がいるとは思ってもみなかったんだろうな。
レックマン博士に会った瞬間、「誰かに似ている」と思ったのですが、逃げようとする後姿を眺めているうちに、それが誰か気づきました。
それはロビン・ウイリアムズというアメリカの俳優でした。
ここで覚醒。