日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第167夜 昔の家で

今朝方に見た夢です。
 
夢の中に降り立ってみると、昔住んでいた家の前にいました。
この家は、私が高校生くらいまで住んでいた家ですが、今では倉庫として使われています。
ガスも水道も止められており、人は住めません。
今では年に1度か2度、本を取りにいくくらいです。
 
ドアを開けると、いつもと違い、黴臭い匂いがしませんでした。
「あれれ。誰か掃除をしたのかな」
中に入ります。
 
いつもは、床に埃がたまっており、掃除機を掛けるところからなのですが、ここにもザラザラ感がありません。
「人が住んでいるみたいだね」
そう言えば、中国人が「貸してくれ」と言っていると、前に聞いたことがあります。
誰かに貸しているのかも。
それなら、合鍵を使って勝手に入るわけにはいきません。
 
台所に行くと、やはり食器類が見当たらず、人が住んでいないことがわかります。
しかし、水は出ているようで、水道の蛇口付近が湿っていました。
「やはり、誰か人を頼んで掃除をしてもらったんだな」
なら、遠慮は要りません。
階段を上り、2階のすぐ手前の部屋に入ります。
ここはかつての私の部屋で、4畳半と8畳の2間続きを使っていました。
本棚や机、ベッドも昔のままで、きれいに掃除が行き届いています。
「30年以上経つのに、ここだけ昔のままだ」
(え。30年?)
あわてて自分の手を見ると、すべすべの若者の手です。
鏡を覗くと、やはり30歳になったかどうかの青年が立っていました。
自意識の上でも、30歳という年齢は、「今年ようやく到達するつもり」でいます。
 
入り口のドアから、味噌汁の匂いが漂ってきました。
ドアを閉め忘れていたので、階下の匂いが上に上がってきたのです。
「あ。お袋がささぎの味噌汁を作っているんだな」
その隣では、父が何か魚をさばいているらしく、出刃包丁の音がします。
ひと言、言っておかないと、父母は久々に帰ってきた息子のために、あれこれと料理を作り過ぎてしまうでしょう。
 
階段の上から、下にいるはずの父母に叫びます。
「オレはさっき冷麺を食って来たから、晩飯は軽いもんでいいよ!」
返事はありませんが、きっと伝わっているはずです。
 
自分の部屋に戻り、昔のアルバムやら、本やらを開きました。
高校生の時に釣りに行った写真。大学生の時にバイクで北海道を1周した記念写真。
懐かしいなあ。
アルバムを戻すと、別に封筒に入った写真が30枚くらいあります。
あれ?なんだっけ。
封筒から抜いてみると、私の娘や息子たちが小さい時の写真でした。
長女は小さい時からわがままで、親の言うことを聞かなかった。
息子は逆に気が弱く、独りでは何もできません。
 
ここで、異常に気づきます。
私はまだ30歳直前で、独身です。
長女が生まれるのは2年後くらい。
じゃあ、なんでこんな写真があるわけ?なぜこれが娘や息子の写真だと分かるわけ?
三半規管の調子が悪い時のように、自分の周囲がゆっくりと回り始めます。
 
階段を下り、居間に入りました。
「オヤジ。どうなっているんだよ」
ドアを開けたその瞬間には、父の背中が見えていましたが、声を掛けると同時に消えてしまいました。
「お袋!」
しかし、台所に人の気配はありません。
流しに近づいてみると、最初に来た時と同じで、蛇口からポタポタと水滴が落ちていました。
味噌汁はおろか、包丁すらもありません。
「じゃあ、さっきの音は何?」
 
ゆっくりと深呼吸をします。
もしかして、私は脳に重大な疾患が出来ているのかもしれません。
「よし。最初から思い出そう。まずはオレのプロフィールからだ」
まずは私の名前から。
「オレの名前は・・・」
思い出せません。
「齢は・・・」
これも思い出せません。
 
「何だよ。じゃあオレは誰だよ」
こういう状態のことは、十分に知っています。
最もありそうな状況は、「オレはもはや死んでいる」というものです。
(2度心臓が止まったことがあり、同じような経験をしています。)
死ぬと思考能力が失われますので、自分が誰かすら思い出せません。ただ、心と記憶の断片があるだけです。
「オレって、もしかして」
その先は直感で悟りました。
 
私は数年前に突然死したのですが、死んでからもあの世に行けず、さまよっているのです。
訳も分からず、辿り着いた先が、昔住んでいた家だったということです。
父母はまだ両方とも生きており、先に死んだ息子のことを憐み、時折、墓参りに来ています。
墓参りに来た時は、墓地の近くにある昔の家にも立ち寄っているのです。
今日はたまたまそんな時に居合わせたのでした。
 
ここで覚醒。
徐々に持病が進行していきますが、なるべく頑張って、父母を送ってから死のうと思いました。
幾つになっても、子に先立たれた親ほど、哀れなものはありません。