日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

「島の女」の背景

 盛岡タイムス紙で、ほぼ3か月間連載していた「島の女─盗賊の赤虎が奥州平泉で鬼女と戦う話─」が、大晦日の朝刊分で終了しました。
 この作品は、3日で書いた作品で、まったく推敲をしていません(いつものことですが)。
 後で読み直したら、元々表現が下手なのに、一発書きのせいで「書きなぐり」に近い状態でした。
 情感も乏しく、筆者としてはダメな作品(失敗作)のひとつです。
 ところが、読者的には受けが良いようで、感想メールも頂き、新聞の編集の方にも「もっと」という意見が届いたとか。
 少し不思議な気がします。
 出てくるのが、赤虎の得意(?)な鬼や怪物の仲間だし、斬り合い場面のオンパレードだからでしょうか。
 
 この作品の着想は、同級会が発端です。
 高校の同級会に出たところ、○十年ぶりに会ったリエコさんという女子の風貌がほとんど変わっていませんでした。少なくとも30歳前後には見えます。
 その時に、思わず口に出してしまったひと言。
 「結婚詐欺事件で、60歳の女が年齢を『30歳』と偽って20幾つの男をだました事件があったけど、ずっと長いこと、『そんなの有り得ない』と思っていました。しかし、今リエコさんを見て、初めてそういうこともあると分かりました」
 ぶしつけな発言に、リエコさん本人は複雑な表情をしていました。
 
 この時、私の頭の中では、「○十年経っても変わらない」が、「300年経っても変わらない」に変化していました。
 (年を取らない女の話はどうだろう。)
 800年生きるという「八百比丘尼」ではちと長すぎるけれど、300年生きる鬼女の話は面白そう。
 怪異譚なら、今昔物語には基本ネタが数限りなくあります。
 幸い、高校時代にむさぼり読んだおかげで、何の話がどこにあるかは概ね記憶しています。
 となると、やはり赤虎ですね。赤虎シリーズのベースは今昔であり宇治拾遺です。
 
 テレビでは竹島がらみの韓国ニュースが朝から晩まで流れていた時期です。
 (トカラ島の伝説があったよな。確か済州島。)
 別に、鬼女の棲む島に流れ着き、島の女と夫婦になったが、その女が鬼であることを知り逃げ帰った、てな話も。
 
 どうやって島に流れ着かせるの?では、うまくイメージがまとまらなかったのですが、たまたま昔の映画「ベン・ハー」を見ていて、ガレー船の件を目にしました。
 何度見ても良い映画です。こういう映画を忘れさせてはならないです。
 ということで、奴隷となりガレー船で使役されていたベン・ハーが、将軍との交流で身分を回復され、義理の息子になるという筋を利用させて頂きました。
 もちろん、パクリではなく、敬意を表する目的ですよ。
 今昔&「ベン・ハー」が、この物語のベースですので、本作が各々を思い出すきっかけになればうれしいです。
 
 小説をあっさり苦痛なく書くコツは、登場人物のキャラを固めることなので、赤虎の妻となる島の女はリエコさんからそのまま頂いて「利江」という名にしました。
 外見や性格が決まると、あとは勝手に動いてくれます。
 よって、「島の女」の「利江」には、実在のモデルがいます。
 
 物語の中では、赤虎はその島の女と寝るわ、子をはらませるわの展開となりました。
 このため、実在のリエコさんには、「モデルにさせてもらいました」と言えずにいます(笑)。
 きっと、叱られますね。
 赤虎シリーズの最終話は、大湯四郎左衛門の猿退治に赤虎が加勢するという話です。
 この話の冒頭と最後に、赤虎と利江の間の子を登場させるつもりですが、利江自身を登場させるかを思案中です。
 
 赤虎が好きな読者は沢山おられますが、赤虎が主役の作品は次作が最後です。
 でも、ご心配なく。
 赤虎シリーズの後は、紅蜘蛛シリーズが待っています。