日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第196夜 高級マンションのロビーで

今朝方、居間でうたた寝をした時に見た夢です。

両眼を開くと、高級そうなマンションのロビーにいました。
目前のソファには、子どもが1人座っています。
5歳くらいの男の子でした。

(お。息子だ。まだ小さいな。)
いつも通り、夢の中にも拘わらず、「今のオレは夢の中にいる」という自覚があります。
「父さん。トイレに行ってきていい?」
トイレはロビーの奥にあります。
「1人で行けんのか?」
「うん」
息子は買ったばかりのゲーム機を握り、立ち上がりました。
「おい。トイレに行くのにも、その機械を持って行くのか?」
「うん」
ま、いいか。好きなようにさせてやれ。

そのままソファに座って考え事をします。
(オレはどうして、ここにいるんだっけな。)
マンションの1階に、息子と一緒に座っている理由がわかりません。
(誰かを訪ねて来たんだろうか。)
自分としては珍しく記憶が曖昧でした。
(今は夢の中だってのに、記憶がないとはおかしな話だ。)
そう考えて、思わずくすっと笑いをこぼします。
「そりゃ、オレみたいに、夢の中で自意識を保ち、総ての夢を憶えているという、変な人間だけの話だろうな」
普通の人は、たまにしか夢を憶えていないみたいだし、夢の中では夢のキャラになり切ってます。

そのまま15分が経ちました。
なんとなく気になり、トイレの方に向かいます。
トイレはロビーの奥の階段の隣です。
トイレの前に行くと、入り口にゲーム機が落ちていました。
「おい。〇〇」と息子を呼びますが、返事がありません。

オレは直感が働く方で、その直感のおかげで何度も致命的な危機を回避して来ました。
そのオレの直感が、「息子は連れ去られた」と言っています。
(さらわれたな。)
すぐに周囲を見渡します。
トイレの反対側の壁に掛けられた時計は、夜の10時を指していました。
階段の傍には、外への出口はありません。
2階には駐車場への通路がありますが、もしそこから出るとなると、車は必ず玄関の前の出口を通ります。
オレはずっと玄関にいたので、そこから誰も出ていないことはわかっていました。
(犯人はこのビルの中のヤツなんだな。)
そう言えば、同じマンションの女性を部屋で殺した事件の話をニュースで見ました。
(あの時は、警察が調べに来る数時間のうちに、女性を殺していたんだっけな。)

「息子を助けるには、いいとこ20分が分かれ目だ」
すぐに玄関の警備室に向かいます。
警備室には、黒人の警備員がいました。
「ちょっと訊くけど、このビルから外に出るには、この玄関と、あとはどこ?」
警備員が意外に流暢な日本語で答えます。
「夜はセキュリティのために、裏の出入り口をロックしますから、この玄関と駐車場の連絡口だけですね。でも、車はこの前を通りますので、緊急の際の非常口くらいしか出口はありません」
オレの考えた通りで良かった。
「じゃあ、まず玄関のドアをロックしてくれる?息子をさらったヤツが中にいるんだよね」
「え。警察を呼びますか?」
「いや。オレが自分で話を付ける」
「でも、ビル全体の住人を閉じ込めると言うわけにも・・・」
警備員が少し抗う姿勢を見せたので、オレはバッグの中から散弾銃を出した。 
「黙って、オレの言うとおりにやれよ」
銃を見ると、さすがに警備員も言うとおりに動きます。

「非常口の鍵は内鍵か?」
「はい。でも鍵の覆いをロックしてしまえば開けられません」
「よし。じゃあ、そうしろ」
全館をロックした後、警備室に戻りました。
「緊急放送は出来るんだろ?」
「はい」
警備員がマイクのスイッチを入れました。

オレはマイクに口を近づけ、館内全部に響くように、ゆっくりと話し出した。
「おい。20分前に、ロビーで息子をさらったヤツに告ぐ。無事な姿のまま息子を返さないと、お前の指を1本ずつ切り取ってなぶり殺しにする。このマンションはもう閉鎖してあるぞ。早く下りて来い」
オレが話を止めると、階上で人の動く音がかすかに聞こえた。
オレは警備員に顔を向けた。
「今はこの建物の中には何人くらいいるわけ?」
「ここは社宅用に借りられている部屋が多いですから、部屋は100あっても、人のほうは20人もいません」
「ふん」
オレはもう一度マイクに向かった。
「おい。今度は息子をさらったヤツじゃない人たちに言うぞ。もし自分は関係が無いと思うなら、すぐに1階に下りて来い。下りて来ないヤツは犯人の仲間と見なして殺す。皆が下りてきたら、オレがひと部屋ずつ探しに行くが、もしどこかに人が残っていれば、そいつも殺す。嘘じゃあないぞ」
オレはここで、傍に立っている警備員を散弾銃でズドンと撃った。
「今の音を聞いたろ。警備員が死んだ音だ。早く息子を返すか、ここに下りて来ないと、このビルの中にいる全員を殺す」
ここでオレはひと呼吸置いた。
「息子が見つかる前に警察を呼んだヤツが1人でもいれば、ここの全員を殺す。いいか。サイレンが聞こえたら全員だ。全員殺すのには5分とかからない。警察を呼んだって間に合わない」
ここで、もう一度、銃をぶっ放した。

「我ながら用意が良いな。なんでバッグの中に散弾銃が入っているんだろ」
バッグの口を大きく開いて見たら、あるわあるわ、短銃だの機関銃だの、爆薬まで入っていた。
ここで、オレは自分がなぜここに来たのかを思い出した。
「あ、そうか。オレはここの人間を殺しに来たんだった」
連れてきた子どもは息子ではなく「隠れ蓑」だった。
「ここの知り合いに用事がある」と子ども連れで来れば、大概の警備員はドアを開けるだろ。
子どもはそのために、浮浪者を飯とゲームで騙して借りてきたのだった。

ま、いっか。
どうせ皆殺しにきたんだし、結末は同じことだってことでさ。

ここで覚醒。
「抵抗するヤツはみんな殺す」と言うところは、「許されざる者」のクリント・イーストウッド調でした。