菊花賞のレース実況を見ようとして、テレビの前に座ったのに、数分で(眠りに)落ちてしまいました。
これは、その時に見た短い夢です。
眼を開くと、灰色の天井が見えました。
私はベッドに横たわっていたのです。
「ここはどこだろ?」
モヤモヤする頭が、ゆっくりと覚醒して来ます。
白っぽい部屋の中にいるようで、周囲には何もありません。
ドアを開けて、女性が入って来ました。
50歳台の後半くらいの年恰好です。
女性は私の視線に気がつきます。
「あら。サエコさん。目が醒めたの?」
部屋の中には私ひとりです。
ということは、私が「サエコさん」ということ?
おいおい。勘弁してくれよ。
私は誰がどう見てもオヤジジイです。
サエコさんなら、どう考えても女性の名前ですね。
慌てて起き上がろうとしますが、体が動きません。
両手両足とも、ぴくっともしないのです。
(こりゃ、どうしたって、夢の中にいるんだから、集中すれば自分の思い通りに動かせるはずだな。)
しかし、動くのは顔だけでした。
左右の手の方を向くと、両手に包帯が厚く巻かれていました。
もしかすると、手の向こうはベッドの枠に縛られているのかもしれません。
「サエコさん。今日は良い天気だから、カーテンを開けましょうね」
女性は窓に行き、カーテンをやや乱暴に引きました。
夢の中では、最初に出てくる異性が、自分の人格に最も近い存在だと言うな。
となると、私本来の人格に近いのは、「サエコ」の私か、そこにいる女性のどちらかです。
どっちも嫌だよ。
女性はベッドの脇に近寄ると、私のお尻の下に手を入れて、何かを確かめました。
おそらく大小便の有無でしょう。
「サエコさん。今日はわがままを言わずに、きちんと食事をしてくださいね」
女性はそれを言うと、一度も私の顔を見ることなく、部屋から出て行きました。
さっきの女性は、白っぽい服を着ていました。
白衣ではなかったようですが、それに近いワンピースでした。
となると、ここは病院で、あの女性は看護師?
ま、そんなのは後回しで良いです。
大事なのは、一体、私が誰なのかということです。
両手両足は、ベッドに括り付けられているかのように動きません。
太腿を動かして、股間を絞ってみると、なんということでしょう!
そこにあるはずのものの感覚がありません。
「おいおい。マジにオレは女なのかよ」
ま、既にオヤジジイで「重い持病あり」の体なので、股間に元気が無いのは当たり前ですが、無感覚となると恐ろしいです。
おっぱいも触って確かめたいのですが、手が動かせないので、それは出来ません。
この時、廊下の方で、「ああ~!」と叫ぶ声が聞こえました。
その声に触発されるかのように、「やだやだ」、「やめてくれ」と喚く声が続きます。
そんな人声を聴いているうちに、私の心が萎えてきます。
「ここって、もしかして精神病棟じゃあないのか」
それじゃあ、私が男だろうと女だろうと、大きな違いはありません。
正常に考えられなくなったので、ここにいるのです。
頭を可能な限り上げて、足先の方向を見てみました。
すると、ベッドの先に大鏡が見えました。
鏡に映っていた顔は20代の女性でした。
「まだ若い女なのに、心の中にオヤジジイが入っちまっている。こんな不幸はめったにないだろうな。あ~あ」
さて、今までいろんな夢を見て来たけれど、こういう夢は初めてです。
今は夢の中なんだけど、どうやって今の事態を打開すれば良いのでしょう。
ここで覚醒。
股間がスカスカだってことに気付いた時の落胆が大きかったので、おそらく、老化を意識することと関係があるのかもしれません。
変な夢でした。