日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第233夜 捜査用ロボット

夕食の後、1時間ほど寝入った時に見た夢です。

眼が開くと、私は左手にタブレット端末を持って立っていました。
改めて視線を前に送ると、どこか部屋の中にいて、5、6人の人が忙しそうに働いています。
皆制服姿でした。

「あれ。これって?」
犯罪捜査ドラマでよく見掛ける場面です。
床には足跡らしき黒い汚れに、番号札が付けられています。
カメラを持った若者が、バシャバシャと部屋中を撮影しています。

「CSIみたいだな」
この場にいるということは、私も科捜研の一員なのかもしれません。
すると、ここで入り口から、ドヤドヤと新しい人たちが入って来ます。
その4人の男たちは、何やら大きな包みを運んできたのです。
男たちは私の前まで来ると、その包みを置き、ファスナーを開きました。
包みの中には、マネキン人形のような物体が入っていました。
真っ白で、表情のない、完成前のような人形です。

人形の全身が露わになると、係員が指差確認します。
「はい。犯人役の準備を完了しました」
すると、再び入り口から、同じような包みが運ばれてきました。
ファスナーが開かれ、中から少し小振りの人形が取り出されます。
「はい。被害者A。準備完了しました」
人形を運んで来た係員は、皆で一礼すると、ドアから出て行きました。

私の前には、人形と若い捜査員が立っています。
その捜査員は徐に人形の後ろに回ると、背中の上部をいじり始めました。
「犯人は身長178センチ、体重82キロ!」
捜査員はそう言うと、私の方に視線を送ります。
私がじっとしているのを見ると、捜査員は「?」の表情をします。

ここで、私は自分の役割を思い出しました。
私の仕事は、この人形を動かし、犯罪が行われた状況を再現させることでした。
「お。スマンスマン」
慌てて、情報をタブレットに入力します。
すると、目の前の人形がウインウインと音を立て始めました。
それらの人形はロボットだったのです。

このロボットは、身長や体重を当事者と同じになるように変えることができます。
また、動作の順番を入力すると、犯罪が行われた時とまったく同じ動きを再現することができるのです。
これを犯人側と被害者側の双方のロボットにセットすれば、犯罪現場を完全に再現することができます。

もちろん、現場検証で得られた情報で構成しますので、多くの欠損箇所が発生してしまいます。
しかし、このロボットには過去に起きた30万件の犯罪の情報がインプットされていますので、頭脳の中で完璧なプロファイリングをすることが可能です。
このため、起きた可能性の高い、幾つかのパターンを捜査員の前で再現して見せてくれるのです。
その辺が、この検証ロボットの優れた機能です。
もちろん、開発者は私。スゴイでしょ。

犯人ロボットと被害者ロボットの双方をセットすると、捜査員全員が部屋の隅に下がりました。
現場検証の始まりです。
まずドアから犯人が部屋の中に入って来ます。
被害者女性が犯人に近寄ると、ロボット2体は抱き合いました。
「なんだ。2人は知り合いじゃん」
その次に、足跡通りに、2体は部屋の中央に向かいます。
数十秒ほど話をしていたかと思うと、犯人ロボットは、洗面所に行きました。
ごとごとと何か音を立てると、部屋に戻ります。

次に、脚立を持ち出して、中央に置き、天井の板を外しました。
周りの捜査員からいぶかしげな声が上がります。
「何やってんだろ。コイツ」
「後で詳細に天井裏を調べてみよう」

次に犯人ロボットは脚立から降り、これを隣の部屋に持って行きます。
これが終わると、再び部屋の中央に2体のロボットが立ちました。
犯人が被害者を「殴るふりをする」と、被害者は床に倒れます。

「ロボットなんだからふりをしなくともいいのにな。まるで人間みたいだな」
「いや。それは違うよ。このロボットは犯罪現場を忠実に再現する。よって、この犯人は実際に、この女性を殴るふりをしたんだよ」
私の説明に、周囲から「ほう」というため息が聞こえました。

犯人ロボットは被害者ロボットの上から、バケツのようなもので何かを掛けました。
「あれ。あれは何だろ」
その後で、犯人ロボットは被害者を助け起こします。
「ああ。さっきのは血だ。床には血飛沫が飛んでいるけれど、殺したわけではない。殺したように見せ掛けただけなんだ」
「道理で、死体が見当たらないわけだ。しかし、この大量の血の跡があれば、誰でもここで殺人が行われたと思うよな」
「なぜそんなことをしたんでしょ?」
「まあ、もう少し見てればわかるさ」

犯人ロボットは被害者を助け起こすと、何かをポケットの位置から取り出し、キャビネットの引き出しの奥に隠しました。
「引き出しを一旦引き抜いて、その奥に隠したのか。気づくのに時間が掛かりそうだ」
「一体何を入れたんでしょ」
「終わったら、それも確認しよう」

ロボット2体は、互いに向き合うと、時計を確かめるように、同時に腕を見ました。
それから、2体とも急いで部屋のドアに歩き出しました。
「こりゃ。殺人が行われたわけではないんだな。2人で自作自演の何かを試みていたのだ」
「一体なんでしょうね」
「天井やキャビネットを調べてみようか」
捜査員がそれぞれの場所の捜索に向かいました。

ここで私は若い捜査員に命じます。
「ロボットが部屋の外に出たから、こっちに連れ戻して、スイッチを切ってくれる?」
「はい」
若い捜査員はロボットたちを追いかけるように、ドアから外に出ましたが、数秒で中に戻って来ました。
班長。あのロボットたち、姿が見えなくなりました。走ってどこかに消えたようです」

この時、キャビネットの方から別の捜査員が声を掛けてきました。
「何か携帯みたいなものですね。1分の表示が出ています。犯罪ドラマだと、時限爆弾のスイッチですけどね。ハハ」
ほとんど同時に、天井の操作員が急に声を上げます。
班長。ここにあるのはどうやらプラスティック爆弾です!」

やられた。
ここは殺人現場ではなくて、テロ事件の現場でした。
そのテロ事件が起きるまで、あと5、6秒です。
私の前にいる捜査員の眼に、瞬く間に絶望感が拡がりました。

ここで覚醒。

ドラマの「CSI」を観ながら眠りに落ちたので、その影響が夢に現れたようです。
「ロボットで現場を検証する」は、少し捻れば使いようがありそうな気もします。