日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第230夜 襖の隙間から その1

地方から帰宅中途に、サービスエリアでうたた寝をしたのですが、その時に見た夢です。

オレは23、24歳。
友だちと小旅行をしており、小さな温泉旅館に泊まった。
浴衣に着替え、布団の上でごろごろしているうちに、ちょっとした悪戯を思いついた。
「あそこの襖をちょっとだけ開き、向こう側から眼だけ覗かせた写真を撮るってのはどう?」
友人のAが笑う。
「心霊写真ね。少し開いた襖の向こうから誰かが覗き見してるっていうヤツだ」
もう1人の友人Bも身を乗り出して来る。
「偽写真かあ。ネットに出せば一部には受けそうだけど、仕込みじゃあダメだろ」
「どうせネットの心霊写真はぜんぶ偽物だろ。どうみても画像を色変換してレイヤーで重ねてるだけなのに、『コワーイ』とか乗っかってくるおバカが沢山いる」
ま、それもそうだ。
「ネット情報なんて、ウソや作り話が前提でなければ、とても付き合っていられんだろ。なら他人を騙す語りを入れなきゃOKじゃない?」
「旅館で撮りました、ってか」
「見る側が勝手に見つけて、騒いでくれるわけか」
「そう。こちらの目的は『ネットの衝撃画像はウソッパチ』だってことを示すことなんだから、解説を一切付けずに放り投げれば良い」
「なるほど。ま、どこまでいけるか撮ってみようか」
「具体的にはどうすんの?」
3人で襖の前に移動する。

布団を敷いてもらったばかりだったが、襖は少し開いていた。
「この中に1人が隠れる。5センチばかり襖を開けて置き、片目を半分こっちに見せる。そこをパチリ」
「簡単過ぎねえ?」
「画像に手を入れたら、わかる人は一発でわかる。ここはアナログでしょ。まるで人が隠れていそうな感じに写せば言い訳もつく」
Bが黒い服に着替え、襖の下の段に潜った。目当ての襖の向こう側は押入れで、少し窮屈だったが致し方ない。

「パシャ」とシャッターを切る。
「ダメだ。こりゃ」
フラッシュを焚いたら、中に人がいるのが丸わかりだ。
「ここは自然光でしょ。オレが襖の前で記念写真的にピースをする。その後ろの襖が少し開いていて、そこから誰かが見てるってのはどう?オレの体で、Bの体を隠せば、それっぽく見えるんじゃないか」
「なるほどね。ピースの腕の下あたりに眼があるわけね」
「そう」
少し薄暗い部屋の中で取り直してみると、なかなか良い感じだった。
「連写して、動作の中に1枚だけにすれば、もっと本当らしく見える」
「よし。それで行こう」
パシャパシャと写真を撮った。

早速、画像をアップした。
「旅先にて。仲間3人で各地を巡っています」
すぐさま反応がある。
「怖い。どこ?」
「マジかよ」
あっという間に数千件に達した。

「やっぱりね。人は自分の見たいように見て、考えたいように解釈する。だからネタは何でも良いわけだ」
「良く考えればわかるのにね。頭に浮かんだことをすぐに書く」
「人を騙すのは簡単なんだね~」
想像通りのことが起こったので、3人とも納得したというか、がっかりしたというか、少し複雑な気分だ。

「じゃあ。この勢いで動画も撮ってみる?」
「部屋に入るところからで、布団い座って『イエーイ』とやったら、後ろに変なものが・・・てなパターンね」
「そう」
すぐに動画を撮り、アップする。
1時間も経たないうちに、また数千軒のアクセスがあった。
「スゴイね」
「あまり騒動にならないうちに、ネタをばらして置く?」
「それじゃあ、意図的にやったことになる。ま、やってるんだけどね。でも、別に記念写真として載せているんだから、記念写真で通せば良いのでは」
「うーん。考えどころだな」
そこで、書き込まれたツイートを読んでみた。
「おお。自称霊能力者まで見てらあ」
「何だって?」
「これは本物の心霊写真です。この写真に写っている女性は、ドータラコータラだってさ」
「出たか、霊能力者が。妄想と現実の区別がつかない人種だな。ところで写真の女性って何?」
「何だよ。その女性って、オレのことなの?」
そこで、タブレット端末で、画像を拡大して見ることにした。
そしたら、まったく予想していなかった事態が起きてしまったのだ。

(続く)