日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第251夜 目が醒めたら

МLBを観ている途中で、10分ほど寝入ってしまいました。
これはその時に観た夢です。

ある日突然、幽霊が見えるようになった。
道を歩いていると、歩道の隅に立っている。
レストランで食事をしている時も、部屋の真ん中に堂々と立っていたりする。

案外、どこにでもいるもんだ。
しかも、映画やテレビみたいに、ぼんやりとはしていない。
はっきり・くっきりとそこに存在している。

どこを向いても、必ず1つ2つは目に入る。
家の中にいる時も、勝手に上り込んでは、目の前を通り過ぎて行く。

もちろん、慣れるてくると、別にどうということもなくなる。
シャワーを浴びている時に、目の前にそれに立たれるとさすがにびっくりするが、驚くのはそういう場合だけだ。
ほとんどの場合、オレとは関わりなくそこにいるので、自然の風景と同じになってくる。

ある日、朝食を食べている時、お皿から視線を上げると向かい側に女性が座っていた。
「おお。由香里か。どこから入ったの?」
由香里は前に付き合っていた女で、結婚寸前のところまで行ったが、結局は別れたのだった。
他の女と同じ。
オレは性格が破たんしているので、1人の女と長くは続かない。

由香里は黙って椅子に座っている。
下を向いて、考え事をしているようだ。
(ドアは鍵を掛けているし、入って来られないよな。)
コイツ。もしかして幽霊?

試しに声を掛けてみる。
「あれから5年は経つ。由香里は元気だった?」
何も答えない。
「こりゃ、お前も幽霊だな。由香里はまだ25歳の筈なのに、どうしてまた死んじまったわけ?」
やはり何も答えない。
聞こえていないのだ。

「女は別れた男のことは、けして思い出さないと言う。なんでオレなんかのところに出るんだよ」
自分とまったく関係ない幽霊なら、すぐ近くに立っていようが、歩き回られようが、あまり気にならない。
ところが、知り合いは別だ。
どうしても、視野に入ってしまう。
しかも、つい相手が幽霊だってことを忘れて、話しかけたりもしてしまう。
こりゃ、慣れるまで時間がかかりそうだ。

ま、気にしないのが一番だろ。
由香里はただ椅子に座っているだけなんだし。
気にしないためには、あえて無視せずに、相手がそこにいるもんだとみなして暮らせばいいわけだ。
そのうちに慣れて、何も感じなくなるだろ。

「今日は何が食いたい?」
「一緒に公園にでも出掛けるか?」
「服は着替えなくともいいのか?」
最後のは愚問だ。執着心があるからこの世に留まっているわけで、着替えできるくらいなら、自分の状況が理解できる。
要するに、自分が死んだことを悟って、あの世にも行ける。
それができないから、こうやってこの世に留まっているわけだ。

しかし、ま、ひとりぼっちでいるより、気は紛れる。
多少、家の中が辛気臭くなるくらいだよな。
そう思い直して、毎朝、テーブルの向こう側に座る由香里に話しかけている。

すると、日数が経つうちに、少し変化が生まれてきた。
たまに由香里がオレのことを見ている時がある。
もちろん、ほんの一瞬で、わずか1、2秒の間だ。
「何か思い出すことがあるのかな」
それがあるから、死後の暗い淵から甦って来たわけなんだよな。
「じゃあ、昔の話をしよう」

由香里と最初に会ったのが、大学の学食だ。
混んでいたから、開いた席に座ったら、前に由香里がいたのだ。
「それから・・・」
何年か分の長い話をした。

でも、どんな恋にも終わりは来る。
相手と向き合うかたちが変わり、一緒に暮らすようになる二人もいれば、恋の終わりと共に別れる二人もいる。
俺たちは後者だ。
「で、最後はどうだっけな」
よく思い出せない。

何がきっかけで、どういう別れ方をしていたんだっけな。
しばらく考えたが、まったく思い出せない。
「死ねば頭が使えない。記憶を辿れなくなっているところは、オレも幽霊並みだよな」
仕方ないなあ。
「由香里。オレたちは何で別れたんだっけ?」
目の前の由香里は、やはり何も答えず、ただ悲しそうな表情をしている。
ま、幽霊はみんな暗い表情なんだけどね。

由香里の表情が変わらないので、冗談を言ってみる。
「まさか、オレがお前を殺してたりしてな。はは」
冗談で言ってみたが、なんだか本当にそんなことがあったような気がしてきた。
「おい。オレがお前を殺したのか」
由香里の死体を床下に埋めて、そのまま暮らしていたりして・・・。

まさかそんなはずはないでしょ。
そんな大きなことを忘れるはずがないよな。
なんだか、自信が無くなって来る。

ここで覚醒。

夢の中での「オレ」は女性を殺して、その後しばらく経ってから自分も首を吊った模様です。
事故や自殺で死ぬと、長い間、闇の中に留まるようなので、ずっと寝ていたのでしょう。