日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第267夜 発掘現場で

土曜の夜、夕食の後で居間で眠り込んだ時に観た夢です。

大学の研究室にいる。
机の前に座っていると、ドアが急に開き、人が入ってくる。
入って来たのは先輩だった。
「スゴいぞ。巨人のミイラが出た」
「え?」
「座ってる場合じゃないぞ。ウチのゼミに召集が掛かったから、院生全員でシベリア行きだ」
でも、ウチのゼミは考古学じゃなくて、社会学だけど。
怪訝そうな表情を見取ったのか、先輩が補足する。
「神殿みたいな跡も出たんだよ。調度品とか、祭事に関連した出土品が沢山あるから、オレたちの出番だってことだよ」
なるほど。ウチのゼミは人類学に近いことを専門にしている者も多い。

急いで自分の部屋に帰り、荷物をまとめた。
翌日は成田に直行し、そこでチケットを買った。
「何でも良いから、ロシア行きのを早く!」

オレたちは翌々日にシベリアに着いた。
凍結土は、広く深く掘り下げられている。
ここは天然ガスの採掘場で、掘っているうちに偶然遺跡にぶち当たったのだった。
既に、ロシアを含め欧米の研究者が先に来ており、既に500人くらいが遺跡に取りついている。

オレたちは、人込みを掻き分けるように前に進んだ。
大半の研究者は現場近くで待たされているが、オレたちの優先順位はかなり高い。
それは、ここの開発には、我が国の資本がかなりの額を出資していたせいだった。

底に着くと、ちょうど棺桶のかたちに穴が掘られていた。
オレたちはその穴を見て、思わず互いの顔を見合わせた。
縦径が3辰らいあったからだ。
さらにその穴に近づいて、中を覗き込む。
その穴には、確かにミイラが横たわっていた。年月を経ているので肌の色が黒ずんでいる。
「スゲー。280センチくらいはありそうだ」
「百年くらい前に巨人の屍が出たことがあって、写真が残されている。でも死体のほうはどこかに消えたので、フェイクだと言われてきた。でもこれを目の当たりにすると、巨人は本当にいたわけだな」
何万年か、何千年か前、人類の文明が生まれる前には、地球には巨人族がいて、独自の文化を営んでいた。
そんな神話は世界中にある。それらは、あながち妄想ではなかったのだ。
ま、恐竜だって、その存在が実証される前は「竜の骨」だと言われてきたわけだしね。

「今の人類で最も身長の高かった記録は、およそ2達械悪造らいだろ。これはそれをはるかに上回る」
「まったくだ」
先輩と話をしていると、ウチの教授がやってきた。
「お。皆着いてたか」
「おはようございます。歴史的瞬間に呼んでくださり、有難うございます」
教授が笑った。
「驚くのはまだ早いぞ。こっちに来てみたまえ」
教授はスタスタと歩き出す。
オレたちは、一旦、採掘場の上に出て、隣の採掘場に降りた。
こっちでは、穴が放射状に8つ並んでいた。

「わ。出たのは1体だけじゃあなかったのかあ」
隣の先輩が声を上げる。
「驚くところは、ミイラの数ではないんだよ」
教授はそう言うと、穴のひとつに近づいた。
「見てみな。これを」
オレたちは皆でその穴を覗き込んだ。
先ほどと同じ3端紊竜霓佑離潺ぅ蕕世・・・。
「うわ。コイツは頭に角がある」
驚いたことに、その巨人の頭には左右に長い角が2本出ていた。
オレは疑り深い性格なので、すぐに下に降り、その巨人の角を触ってみた。
「ありゃ。本物だ。くっつけたものじゃないや」
これじゃあ、正真正銘の鬼だ。
巨人というだけでなく、鬼の仲間だったとは畏れ入った。

「ふっ」
教授がせせら笑う音が聞こえた。
顔を上げると、教授は隣の穴を顎で示した。
まさか・・・。

すぐに穴を這い上がり、隣の穴に向かった。
そこでオレが見たものは、頭が幾つもある巨人だった。
これは前にどこかで見たことがある。
オレが言葉に出す前に、教授が先に説明してくれた。
「そう。これは十二面観音だ」
頭の周りを一巡するように顔が付いているし、手もばらばらと何本も付いている。
おいおい。

「この隣はもっとすごいんだよ」
呟くように教授が言った。
この時、オレの頭の中には、どういうわけか、頭が人で体が動物だと言う、インドかどこかの神様のイメージが拡がった。
だが、その想像は少し違っていたらしい。
穴の上から教授が手を伸ばして、オレを引き上げる。
絶対に隣の穴も見ろよな、というわけだ。
「隣のミイラは、まさにミノタウロスなんだよ」
うへへ。
こいつを正面から受け止めるのは、精神的にかなりキツくなってきた。

「なあ君」
教授がオレに話し掛ける。
「これらの事実を総合すると、君はどういうことが分かるかね」
「数千年前には、こんな怪物がたくさんいたということですよね。たぶん、この幾つか先の穴には、ドラゴンだって埋まっているでしょう」

「それは少し違うね」
教授がオレに向き直った。
「この世の総ては、実は『神さまが創り出したものだった』ということなんだよ」
教授の言葉が終わると同時に、びゅうと風が吹く。
吹雪が穴の底まで吹き込んで来た。

ここで覚醒。