日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第316夜 目覚め

深夜、DVDを見ようと思ったのに、予告を見ているうちに眠り込んでいました。
これはその時に観た夢です。

自分の部屋で横になっている。
幾らかは目覚めているが、まだ半分以上、眠っている状態だ。
薄目を開くと、窓の外が少し明るくなって来ている。
朝方だな。
オレはこれから目覚めようとしているのだ。

視野の端に障子が見える。
「あれ?ここは」
オレが高校生の頃まで暮らしていた部屋だ。
今は倉庫のはずだが。
(なるほど。今は夢の中だ。こないだ、この家に行き、2階に置いてある太鼓にシートを被せて来た。
それで、この家のことが夢に出て来たのだ。)
て、ことは、オレは高校生くらいになっているのだな。
机の上の参考書を見ると、中学生用だった。

窓がほんの少し開いているらしい。
そうそう。いつも数センチくらい開けていた。
よほど真冬でなければ、いつもそうだった。

その窓の隙間から、梅の花の匂いが漂って来る。
これは、隣家の庭にある梅の樹だ。
樹齢百年を超えるこの樹は、人が3人かかってようやく手が回るくらいの太さになっている。
「良い匂いだ。もう春が来てるのだな」

体は横になったまま、意識だけがその梅の樹の近くに飛んでいる。
オレは空中に漂って、根元の地面を眺めていた。
まだ、あちこちに霜が見える。
春が来ようとしているが、まだまだだ。

幹を順々に見上げて行くと、樹皮の隙間にてんとう虫が隠れていた。
コイツもこうやって、寒い冬をしのいで来たのだ。

高さ2メートルくらいの空中を漂って、隣の畑を回り、国道の方に向かう。
ここは田舎なので、車がほとんど通らない。
薄明かりの中、オレはそのまま空中に留まってぼんやりしていた。
ものを考えるでもなく、ただぼんやりと周囲を眺めているのだ。

国道のはるか先に人影が見える。
北側の4百辰らい先には坂があるが、その坂を上って来たらしい。
お坊さんのような、あるいは山伏のような装束を身にまとっている。
近くには昔から山伏が修行する山がある。
このため、時折、夜昼関係なく、道を修験者が通り掛かるのだ。

山伏が百辰らいのところまで近づいた。
こちらに歩いて来るのは、男だった。
50歳台だろうか。
眉間に皺を寄せて、前だけを見詰めて歩いて来る。
その形相がスゴイ。

オレはその男の形相に圧倒され、空中を後退した。
国道から20嘆爾った家の玄関の前まで戻る。
「これであの男と向き合うことは無いだろうな」
少しホッとして、やはり空中に浮いてじっとしている。

男が前の国道を通り掛かる。
やはり、進行方向の先を見据え、歩き去ろうとする。
横顔が、すぐに背中に替わった。
「この先を左に曲がり、山に向かうのだろうな」
そう思いつつ、ぼんやり眺めている。

すると、男が急に立ち止まった。
数秒間そのままの体勢で、じっとしている。
まるで、辺りの気配を探っているようだ。

男が振り向く。
顔の色が赤黒い。
怒っているかのように、鋭い視線だ。

その男はオレを見つけ、こっちに向かって歩き出した。
なんだか、とってもヤバそうだ。
オレのことを掴まえに来るような気がする。

オレは玄関の前を上に飛び上がって、窓の隙間から自分の部屋に戻った。
部屋の中央には、オレの体があったが、その中にひゅうっと入り込む。
男の気配が近づいて来る。
男はオレの家の玄関の前まで来ると、そこで立ち止まる。
それから、上を見上げ、そのままじっとしていた。

「ははあ。オレが体に戻ったので、直接には関われなくなっているのだな」
だから、すぐ間近にいるのに、それ以上近寄って来ない。
少し安心したが、しかし、オレの方もまったく動きが取れない。
自分の体の中に固まったまま、縮こまっている。

男の威圧感が凄い。
ここで、オレは今の事態に気がついた。
「あれは到底、生きている人間ではない」
自分だって、ついさっきまで肉体を抜け出ていたわけだが、その辺には矛盾を感じない。
「このままでは、取り憑かれるか、連れて行かれる」

廊下を隔てた隣の部屋では父が寝ている。
父に追い払って貰おう。
起き上がって、父を呼ぼうとする。
しかし、体が動かない。
意識だけなら簡単だが、生きている父を呼ぶには、肉体を動かし、声を出す必要がある。
「いつもこんな重い物を意思の力で動かしていたのか」
魂だけ飛ばすのは簡単なんだけどな。

足が立たないので、這って廊下を歩き、両親の部屋に行く。
やはり父は寝ていた。
父をゆすり起こし、「外に男がいる」と伝えた。

外にいるのは幽霊なのだが、さすがにそうは言えない。
父はオレのように幽霊を見ないし、信じてもいないからだ。
父はすぐに目覚め、「泥棒か?」と呟いた。
父はさっと起き上がり、廊下に出て、階段を降りようとするが、何かを思いついたのかオレの部屋に来た。
入り口には野球のバットが置いてある。
父はそれを取ると、階下に降り、玄関を開けた。

程なく、父が戻って来た。
「別に誰もいないぞ。夢でも見たんじゃないか」
感覚を研ぎ澄ますと、父の言葉は本当で、外の気配は消えていた。

助かった。
父のように、幽霊を信じず、何とも思わない者は、向こうからの影響を受けずに済む。
まったく性質の異なる圧力(かエネルギー)を発しているので、向こう側のヤツらを遠ざけることも出来るのだ。
オレのように中途半端な感覚を持つ者は、始終、あっちの側の存在に影響されっぱなしなのだが。

これでまた眠れる。
そう思ったら、急に眠くなってきた。

ここで覚醒。

昔、実際に経験した出来事を追体験する夢でした。
夜中に眠れないことが多かったので、仕方なく、自分の回りの状況を想像したり妄想したりしていました。自分の体から東西南北に向かって20~30知イ譴申蠅乃きていることを、順番にゆっくり想像するというものです。
これに慣れて来ると、猫の歩く足音や、虫の小さな呟きまで聞こえて来るようになります。

実はこれが、第六感を研ぎ澄ます訓練方法だったようです。
横になって、遠くの音に耳を傾けていると、自然のものではない物音が混じっているのがわかります。
これが始まりで、じきに、様々な異変が目に見えるようになります。

もちろん、その殆どは妄想です。
妄想であって欲しいです。