日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第324夜 鍵

クリスマスの夕食後、仮眠を取っている時に観た夢です。

私は小学校に勤めている。
年齢は45歳。独身の音楽教師だ。
私が勤めている学校はかなり古くて、今年創立130年を迎えた。
校舎自体は戦後のものだが、倉庫やら付属の建物にはもっと古いものがある。
校舎の裏には戦時中に使った防空壕がそのまま残っている。

古い学校だからかもしれないが、おかしな出来事が時々起きる。
今では父兄にも広く知られたことだが、誰もいない教室で子どもが駆け回る足音が聞こえる。
概ね、夏休みや冬休みの夕方で、誰もおらず、学校も閉まっているのに、校内で足音が聞こえるのだ。
それも1人2人ではない。5人以上のバタバタという音が響く。
PTAの役員が役務をしている時に気づいたのだが、回りに確かめてみたら、「私も聞いたことがある」「オレも」という声が沢山上がった。

宿直の先生にも、もちろん、これを聴いた先生はいたが、中高生で卒業校のプールに勝手に入った例があったので、生徒か元生徒が悪戯していると思っていたらしい。
だが、やはり深夜にも聞こえる。
夜中の学校には生徒は絶対に来ないので、これは別のものだ。

まあ、頻繁に起きるのは夕方の6時ごろで、先生方が帰った直後だ。
今の校長は臆病な性格らしく、4時になるとさっさと帰宅する。
宿直の先生の中には、子どもの笑い声を聞いた先生がいて、その話を聞いた教職員全員が震え上がった。
それ以後、宿直になると、その教員は早めに見回りを終え、夕方以降は宿直室から出なくなった。

私が日頃いるのは音楽室だが、ここでもおかしなことが起きる。
やはり誰もいない筈なのに、時々、がたんと物音がする。
とは言え、学校でよく言われる、「ピアノの音がする」みたいな怪談は起きて来なかった。

しかし、それも「これまではそうだった」という話だ。
今、私は音楽室の前にいる。
中に入れず、廊下に立っているのだ。
何十年も使ったことの無い音楽室の鍵が、なぜか今日は掛かっているので、閉め出されている。
昔風の鍵で、くるっと2回回さないと閉まらない型なので、偶然閉まることは無い。
音楽室のドアはここと、あともう一か所、避難口がある。
外から避難口のドアを壊して中に入ることも出来るが、夜中に誰かが侵入したとしても、内側から鍵を掛ける理由が思い当らない。

そこへ、学校事務の田中さんと用務員さんが鍵を持ってやって来た。
「おかしいですね。こんなことは初めてです」
用務員さんが鍵を差し込もうとすると、田中さんが慌てて止めた。
「他の先生方を呼んでからの方が良いんじゃないですか?もし誰か不審者が隠れていたりすると、4、5人は必要です」
「それもそうだね。じゃあ、連絡して下さい。念のため、刺又も持って来てと伝えてください」
そこで、田中さんが職員室に携帯で連絡した。

3人で廊下に立ち、他の先生方が来るのを待った。
「でも、もし外から侵入したのなら、もう逃げてますね」
「むしろその方が有難いですね。怪我人が出たりすると困りますから」
この時、私は別のことを考えていた。
「卒業生が入り込んだのなら、大したことではないですね。ここの音楽室にはピアノくらいしかありませんし。盗まれる物は無いです」
「泥棒の可能性は無いだろうと思いますね。やはり、悪戯で入ったか、あるいは・・・」
田中さんが言葉を途中で遮る。
「そこでやめてください。気持ち悪いから」
気持ち悪いも何も、これから鍵を開けて中を確かめるのに。

そこへ、男先生が2人やって来た。
2人はそれぞれ刺又と棒を携えている。
「泥坊やホームレスでも困りものですが、あっちの奴でも嫌ですね」
「あっちの奴」とは、もちろん、この世のものならぬ存在だ。
1人は宿直の時に、気味の悪い体験をしたこともあり、完全にビビっていた。

「まあ、この人数がいれば、どうにか」
用務員さんが恐る恐る鍵を開けた。
皆で音楽室の中に入ってみると・・・。

何ごとも無かった。
非常口はがっちり閉まっていたし、室内にも荒らされた跡がまったく無かったのだ。
「廊下側からは鍵を使わないと閉められないです。鍵は1つしかありませんから、その可能性はありません。もし内側から閉めたとなると、ここのつまみを2回右に回しきらないと閉まらないので、やはり誰かが閉めたのです」
でも、その誰かって誰のこと?
皆の頭には、同じことが思い浮かんだはずだが、誰1人としてそのことは口にしない。
皆、その場に固まったまま、互いの顔を見ている。

ここで覚醒。

小学校に勤務する家人が、夕食の時に話していた場面を、そのまま夢に観たようです。
この小学校の記念写真には、さまざまなものが写るので、「父兄に写真を見せる時には気を付けろ」という申し渡しがあります。
1度、生徒の頭の近くに大きなオーブが写ったことがあり、母親が半狂乱になって学校に来たとのことです。

なお、このケースは本物で、本物はあっさりしています。
これを鍵を閉める側(すなわち幽霊)の視線で書けば、少し面白くなるのではないかと思います。