日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第334夜 夢に囚われて (その1)

夕食の支度が終わって腰を下ろしたら、ほんの数分で寝入っていました。
これはその時に観た短い夢です。

眼を開くと、床に胡坐をかいて座っていた。
オレの膝の上には、5歳くらいの女の子が腰かけていた。
(たぶん娘だな。)
「お父さん」
やっぱり娘だった。
本物の娘ではなく、この夢の中での話だ。
オレは夢の大半を覚えている。これは、夢の中でもどこかで現実世界と繋がっているためだ。
夢の中にいる時、オレには「今は夢だ」という実感があるのだ。

「お父さん。夢を観ている時に死んじゃったら、どうなるの?」
「え?」
「ミクはね。夢を観ながら死んじゃったら、夢から出られなくなるんじゃないかと思うの」
オレの娘は「ミク」という名前だった。
この娘に対し「ただプツンとスイッチが切れるように死ぬだけだよ」とは言いたくなかったので、オレはミクの説に乗っかった。
「そうだよね。もしかすると、死ぬ時観ていた夢の中にそのままずっといるのかもしれないね」
「その方が良いよね。ミクはよくお父さんの夢を観るから、ずっとお父さんと一緒にいられる」
参ったな。こういうことを言われると、愛しくてたまらなくなる。

その夜のこと。
オレは夢の中で目覚めた。
最初は真っ暗な闇の中だった。
「ここは夢の中だな。いったいどういう夢なんだろう」
手さぐりで前に進む。

しばらく前進したが、一向に状況が分からない。
「どうなってるんだ。筋もへったくれもない」
そのまま恐る恐る周囲を確かめていると、遠くの方に薄らぼんやりした灯りが見えて来た。
「よし。あそこに行こう」
そう思った瞬間、オレはその灯りの前に立っていた。
どうやら目の前に大きな扉があるようだ。
オレはその扉を押し開けて、中に入った。

眩しい。
中には明るい照明が点いていた。
眼が慣れるまで、しばらくそのままじっと待った。
しばらくしてそこの明るさに慣れると、オレは自分が何かの建物の中にいることを知った。
「ここはどういう所だろう?」
回りを見回す。
なんとなく日本風ではない作り方だ。中国?

フロアの端の方に階段があった。
とりあえずそこを上ってみることにした。
1階の端まで歩き、階段を上る。
この時、オレは自分が黄色いジャージを着ていることに気がついた。
左右の脇の方には黒い線が上から下まで繋がっている。
「この装束。前にどっかで見たことがあるなあ」
しかし、頭がボンヤリして、うまく思い出せない。
いったい、どうなっているんだ。

階段を上り終えると、すぐにオレは今の事態を把握した。
上のフロアに行くと、そこで背の高い黒人が俺を待っていたからだ。
背丈は2メートルはありそう。
おまけにサングラスを掛けていやがる。
「こいつ。ジャバールとかなんとかいう名前のヤツじゃんか」
おいおい。
上下が繋がったタイツみたいなジャージと、この黒人。
オレは「死亡遊戯」の中にいるのかよ。
さすがにゲンナリする。
オレが映画の通りブルース・リーだったならともかく、ジャージの中身は普通のオヤジだ。
これでどうやって戦うわけ?

と思う間もなく、ジャバールの蹴りが飛んで来た。
オレはスウェイバック?でかわそうとするが、やっぱり足の先が肩口に当たってしまう。
チクショ-。

(その2に続く)