日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第348夜 死者の花嫁

いやはや、眠りに就くと悪夢を観る。その繰り返しになっています。
これは、つい先ほど観ていた夢です。

妻が死んだ。
まだ結婚して半年しか経っていない。
妻は医者だったが、「医者の不養生」を地で行くタイプで、診療にのめり込んでしまった。
インフルエンザの大流行があり、妻がその治療に没頭している間に、自分が感染し、発症からわずか3日で亡くなってしまったのだ。

妻はまだ28歳だった。
ダンナになりたてのオレとしては、なんとも言葉も無い。
あの妻が居なくなって、オレは果たしてこのまま生きて行けるのだろうか。
まさに絶望だ。

だがオレにはまだ望みがある。
妻を生き返らせれば良いのだ。
オレは白魔術に詳しい。
白魔術は簡単で、失せ物を見つけたり、畑の害虫を呪いで駆除したりするものだ。
悪意はなく、人を呪ったりはしないので、白魔術と言う。
オレはアフリカに居る時にこの白魔術を覚え、そしてそこで医療奉仕に来た妻に出会ったのだった。

白魔術を会得するくらいだから、当然、普通の魔術にも興味がある。
人を呪う方は、黒魔術と言う。
オレはこっちの黒魔術の方の知識も持っていた。
もちろん、これまで自分で試したことは無い。

だが、こうなったらやってみるべきだろう。
妻が死んでまだ2日だ。
3日以内に処理すれば、妻を生き返らすことが出来るかもしれん。

妻の死体は、まだ病院の霊安室の中だった。
オレは妻のIDを使って、病院の中に侵入した。
冷蔵庫から妻の死体を引き出し、そのままそこで「蘇り」の魔術を使った。
「まだこの世にいる死せる魂よ。生き返れ。この体に戻って来い」
あとはお決まりの呪文を唱える。
この魔術が終われば、後はその効果が出て来るのをじっと待つだけだ。

20分ほど待っていると、妻の指が動いた。
良かった。どうやら成功したようだ。
そのまま眺めていると、妻が目覚め、ゆっくりと起き上がった。
妻はオレの顔を見ると、優しく微笑んだ。
「ありがとう」
どうやら本当に成功したんだな。
しかし、次の言葉はオレの想定外だった。
「すまんね。このオレを生き返らせてくれて。若い女の体に入れてくれたとは有難い。これから人を騙してバラバラに刻むのに都合がいいぞ。後で礼はさせてもらうが、まずは腹を満たしてからだ」
妻は起き上がると、一目散に霊安室から飛び出して行った。

「しまった。妻を生き返らせるのではなく、妻の体に別の魂を入れちまった。しかも、あれは殺人鬼か食人鬼のようだぞ」
それじゃあ、まずは、さっきの魔術を反故にしなくてはな。
どうすりゃいいんだろ。
手帳をひも解いて探すが、なかなか見つからない。
そこはそれ、オレはこっちの魔術ではまだアマチュアだ。

しかし、悪夢の本番はこれからだった。
突然、冷蔵庫の扉がどたんばたんと音を立て始めたのだ。
オレはすぐに、今起こっている事態を把握した。
オレの呪いは、他の死体にも聞こえていたのだ。
それで、この部屋の中の死体が全部生き返ってしまったというわけだ。

背筋がうすら寒くなる。
「待てよ」
オレはさっき、「まだこの世にいる死せる魂」に呼びかけたのだった。
そうなると、もしかして、そこいらじゅうの死体が起き上がっている可能性がある。
街に死霊が溢れてしまうかも。

なんてことだ。
オレは地獄の蓋を開いちまったのだ。

ここで覚醒。

この前後の夢もドロドロです。