日刊早坂ノボル新聞

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「夢幻行」 第9夜 春雪列車 連載開始

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2日月曜から盛岡タイムス紙にて「春雪列車」の連載が始まっています。概ね21回前後の連載を予定しています。
この「春雪列車」の概要は次の通りです。

3月になってから降った春の雪のため、「こたつ列車」が運行の途中で停止した。 雪崩か土砂崩れで線路が塞がったためだ。
復旧には6時間を要することになり、乗客の4人はこたつを囲んで、「それぞれの人生で最も怖かった話」を、輪番で話すことにした。
ひとり1人の感じた恐怖とは、果たして一体どんなものだったのか。
1人目(俺)の恐怖は、「座敷わらし」を実際に体験したこと。
2人目の男は、自分のせいで、幼馴染みが誘拐犯に連れ去られたのか、という疑念。
3人目の女性は、息子が溺死した時のこと。
4人目の女性は、瀕死の家族を捨てる時の自身の心境、を語ります。

私は「これまでに一番怖かった体験」のコレクターで、様々な人に訊いてみることにしています。
この「春雪列車」で紹介した総ての話が、自分や他の人から聞いた実体験をベースとしたものです。

なお、筆者自身の体験は、最初の「座敷わらし」です。
以前、別の作品でもその体験談を使ったことがあります。
岩手県内では、何か所か「座敷わらし」が出ると伝えられる家があります。
私の親戚の家もそうでしたが、「座敷わらし」繋がりで、やはり昔それが出たと言うK町のM家を訪問したことがあります。
庭に和服を着た女性が立っているので、後で「あの人はどなたですか」と訊いたのですが、答えは「今ここに人は住んでいないので、そういう女性はいない」とのことでした。
さすがに、この時は震え上がりました。

さて、4人それぞれの恐怖の「質」はかなり異なっているのですが、私としては3人目の話が一番こたえます。
海水浴に行き、3歳の息子の手をほんの数秒放したら、一瞬にして息子の姿が消えていた、という話です。わずか30センチの波なのに、一瞬で子どもがさらわれてしまったのです。
本人からその話を聞いた時にも、やはり震え上がりました。
大人にとっては膝の上くらいの深さ、3歳の子どもでも腰までの深さしかない場所で、あっという間に波間に消えてしまったのですから。

「怖い話」と言うと、殆どの人が幽霊の出る怪談を思い浮かべると思いますが、実際に尋ねてみると、実際に幽霊を体験した人はあまり多くは無く、「人のこころ」の恐ろしさを挙げる人が大半です。
あるいは、ふとした気の緩みで、大きな不幸が降りかかる、などです。